インプラントのぐらつきには、人工の歯を留めるネジの緩みのように部品で起きているものから、インプラント周囲炎で支えの骨が減っているものまで、原因に幅があります。見た目や噛んだ感覚だけでは区別しにくいため、ぐらつきに気づいたら、治療を受けた歯科医院に連絡して診てもらうのが基本です。
この記事でわかること
- ぐらつき方から考えられる原因と、受診の急ぎ度
- ぐらつく主な原因(ネジの緩み・人工の歯の破損・インプラント周囲炎など)
- ぐらついたときにすることと、避けたいこと
- ぐらつきを放置するリスクと、治療費・保証で確認すること
インプラントのぐらつきの見分け方|考えられる原因と受診の急ぎ度
動いているのが人工の歯だけか、根元から動いているかで、考えられる原因が変わります。日本口腔インプラント学会は、治療後に起こりうる問題として、ネジの緩み、人工の歯の破折や脱落、インプラント周囲の炎症を挙げています。
| ぐらつきの症状 | 考えられる原因 | 受診の目安 |
|---|---|---|
| 噛んだときに人工の歯が動く・浮いた感じがする | 人工の歯や土台を留めるネジの緩み | 早めに受診を検討してください |
| 人工の歯が欠けた・割れた、外れかけている | 人工の歯の破損、接着の低下 | 早めに受診を検討してください。外れた部品がある場合は保管してご持参ください |
| 根元から動く(歯ぐきの腫れ・出血・膿を伴う場合がある) | インプラント周囲炎による骨の減少、インプラントと骨の結合不全 | 速やかな受診をおすすめします |
| 歯ぎしりの自覚があり、緩みや欠けをくり返す | 過度な力によるネジや人工の歯への負荷 | 次回の定期検診を待たずに相談をご検討ください |
※上記は一般的な目安であり、複数の原因が重なっている場合もあります。正確な原因は歯科医師によるエックス線撮影や口腔内の確認を経て判断されます。
インプラントがぐらつく主な原因
インプラントは基本的に、あごの骨に埋める人工歯根(インプラント体)、その上に付ける土台(アバットメント)、いちばん上の人工の歯(上部構造)の3つの部品でできています(人工歯根と土台が一体になった種類もあります)。部品どうしはネジやセメントで固定されているため、どの部分に問題があるかで対応が変わります。
部品の構造や、ネジ(スクリュー)との関係は次の記事で詳しく解説しています。

人工の歯や土台を留めるネジの緩み
人工の歯を留めるネジや、土台を留めるネジが緩むと、骨の中の人工歯根はしっかりしていても、人工の歯だけが動くように感じられます。
緩んだまま噛み続けると、土台が揺れ続けて、ネジが折れたり、人工歯根まで傷んだりするおそれがあります。日本口腔インプラント学会の治療指針によると、ネジが緩んだ場合は、噛み合わせを確認・調整してから、トルクレンチという専用の器具で決められた強さに締め直し、必要ならネジを交換します。
人工の歯(上部構造)の破損や外れかけ
人工の歯の一部が欠けたり割れたりしたとき、セメントで付けた人工の歯の接着が弱まったときにも、ぐらつきや浮いた感じが出ます。日本口腔インプラント学会の治療指針によると、人工の歯の破損は、強い噛む力や歯ぎしり、人工の歯の設計などが原因になり、壊れる前にはネジの緩みがみられることが多いとされます。
ネジで留める人工の歯には、噛む面にネジを通す穴があり、ふだんは樹脂の蓋でふさがれています。このネジ穴の蓋や、人工の歯そのものが取れたときの対処法は、次の記事で解説しています。

インプラント周囲炎による骨の減少
インプラントの周りにも、歯周病と同じように、細菌による炎症が起こります。炎症が歯ぐきにとどまる「インプラント周囲粘膜炎」と、周りの骨が減っていく「インプラント周囲炎」があり、周囲炎は放置するとインプラントを失うおそれがあります。
日本臨床歯周病学会によると、インプラント周囲の病気は、重く進むまで痛みなどの自覚症状があまりありません。根元からぐらつく段階では、炎症がかなり進んでいるかもしれません。歯ぐきの腫れ方や色の変化から周囲炎を見分けるポイントは、次の記事にまとめています。

インプラントと骨の結合がうまくいかない
人工歯根(インプラント体)は、埋めたあとに骨と結合して安定します。この結合が十分に得られなかったり、あとから失われたりすると、人工歯根そのものが根元から動きます。日本口腔インプラント学会の治療指針によると、噛み合わせが合わないまま強い力が長くかかり続けた場合や、口の中の衛生状態が著しく悪いまま長く過ごした場合には、結合が失われて人工歯根が抜け落ちることがあるとされます。
日本歯科医師会によると、喫煙は傷の治りや骨を作る細胞の働きに影響し、骨の治りを遅らせます。糖尿病の人では、骨を作る細胞の働きや数が落ちて骨結合ができなくなるおそれがあり、治療後にはインプラント周囲炎を起こしやすくなるとされています。骨粗しょう症もリスク因子のひとつです。禁煙は、治療が終わったあとのメンテナンス期間も続けることが求められます。
歯ぎしり・食いしばりによる強い力
歯ぎしりや食いしばりがあると、インプラントに強い力がくり返しかかります。日本口腔インプラント学会の治療指針では、歯ぎしりによる過大な力は、ネジの緩みや破折、人工歯根や人工の歯の破損を起こすリスク要因とされています。
天然の歯は、根の周りにある歯根膜がクッションになり、噛む力を感じ取るセンサーも備えていますが、インプラントにはどちらもありません。日本歯科医師会によると、強い力がかかっても感じ取りにくいため、噛み合わせには十分な注意が要ります。
歯ぎしりは眠っている間に起こることが多く、自覚がない人もいます。同指針では、頬の内側や舌に歯の跡が付いている、あごの筋肉を押すと痛むといった様子が、歯ぎしりを疑うサインとされています。緩みや欠けをくり返す場合は、歯科医院で噛み合わせを診てもらい、就寝時に着けるマウスピース(ナイトガード)について相談してください。同指針は、歯ぎしりの強い人にはナイトガードの装着を勧めています。
インプラントがぐらついたときの対処法|すること・避けること
ぐらつきに気づいたら、まず治療を受けた歯科医院に連絡します。治療した医院には、使ったインプラントの種類や部品、これまでの経過の記録があり、原因の検査から部品の用意までを進めやすいためです。
連絡するときに伝えること
- いつから:ぐらつきに気づいた時期と、きっかけ(硬い物を噛んだ直後など)
- どこが:ぐらつく場所と、人工の歯だけか根元からか
- ほかの症状:痛み、腫れ、出血、膿があるか
- 外れた物:外れた部品や人工の歯があるか
受診までに避けたいこと
ぐらつく部品に力がかかり続けるほど、ネジの緩みや部品の破損は進みやすくなります。ネジの締め直しは、噛み合わせを確認したうえで専用の器具を使い、決められた強さで締める処置です。受診までは、次のことを避けてください。
- 舌や指で何度も触る、揺らして動きを見る
- ぐらつく側で硬い物や粘りのある物を噛む
- 市販の工具で締める、接着剤などで固定する
- ぐらつくからといって歯みがきをやめる(力を入れすぎずに続ける)
外れた部品は捨てずに清潔な容器に入れ、受診のときに持っていきましょう。
治療を受けた医院に通えないとき
転居や閉院などで治療を受けた医院に通えない場合は、別の歯科医院に相談します。インプラントは種類によって部品や器具が違うため、医院名と治療を受けた時期を伝え、保証書やインプラントの種類が分かる資料があれば受診のときに持っていきましょう。電話の段階で、他の医院で入れたインプラントのぐらつきを診てもらえるか聞いておくと、受診がスムーズです。
インプラントのぐらつきを放置するリスク
ぐらつきの原因によっては、痛みを伴わずに進みます。インプラント周囲炎では、気づいたときには骨が大きく減っている場合もあります。
ネジの緩みのように部品で起きている問題でも、そのまま噛み続けると、部品が壊れたり、すき間にたまった汚れで炎症が起きたりするおそれがあります。早い段階なら、締め直しや部品交換で済むこともあるため、ぐらつきそのものを受診のきっかけと考えてください。
骨が大きく減ってインプラントを残せない場合の除去や、その後の治療の選択肢は、次の記事で解説しています。

インプラントのぐらつきの治療費と保証の確かめ方
治療は原因によって異なり、ネジの締め直しや部品の交換、人工の歯の付け直しや作り直し、インプラント周囲炎の治療などが行われます。どの処置が必要かは、検査で原因が分かってから決まります。
インプラント治療は、限られた症例を除いて健康保険が使えない自由診療です。ぐらつきの治療の費用も、原因と処置の内容、医院の料金体系、保証の有無によって変わります。
医院によっては独自の保証を設けていますが、保証の期間や対象、定期的なメンテナンスを受けていることなどの条件は医院ごとに違います。受診の前に保証書を手元に用意し、受診したときに、保証が使えるかどうかと、見積もりの総額(税込)を確認しましょう。
インプラントのぐらつきを防ぐために
ぐらつきの原因になるインプラント周囲炎や部品のトラブルは、毎日の手入れと定期的な受診で防ぎやすくなり、起きた場合も早く見つけやすくなります。
- 毎日の手入れ:日本口腔インプラント学会によると、インプラントは天然の歯に比べて歯ぐきとの結合が弱く、細菌に感染しやすいという欠点があります。歯ブラシに加えて歯間ブラシやフロスを使い、根元の汚れを落とします
- 定期的なメンテナンス:日本口腔インプラント学会は、良い状態を長く保つために、治療を担当した歯科医院での定期的な経過観察を受けるよう案内しています。ネジの緩みや噛み合わせの変化も、このときに点検してもらえます
メンテナンスで何をするのか、通う間隔の目安は次の記事が参考になります。

インプラントのぐらつきについてよくある質問
まとめ
インプラントのぐらつきは、ネジの緩みや人工の歯の破損のような部品の問題から、インプラント周囲炎や骨との結合不良のような骨の問題まで、原因はさまざまです。痛みを伴わなくても進むことがあるため、ぐらつき方にかかわらず、治療を受けた歯科医院に早めに連絡してください。
受診までは、ぐらつく部分を触ったり、その側で噛んだりしないようにしましょう。保証書や外れた部品を用意しておくと、相談を進めやすくなります。

医療法人煌潤会 赤羽駅前歯科 院長
西川 健太(にしかわ けんた)先生
日本大学松戸歯学部卒。国際口腔インプラント学会(ISOI)認定医・専門医、DGZI Japan認定医、厚生労働省認定臨床研修指導医。
インプラント治療歴25年以上、手術実績は通算1万本以上。
ストローマン社エクセレンスパートナーに選出され、ザイゴマインプラント等の難症例にも対応する。
自由診療に関する詳細内容
インプラント治療は、限られた症例を除いて公的医療保険が適用されない自由診療のため、費用は全額自己負担です。ぐらつきの治療も、保険の扱いと費用を事前に歯科医院で確かめておく必要があります。
- 治療内容:原因に応じて、ネジの締め直しや部品の交換、上部構造(人工の歯)の付け直し・作り直し、インプラント周囲炎の治療などを行う
- 費用(税込)の目安:原因と処置の内容、医院の料金体系、保証の有無によって異なるため、検査後の見積もりで確認する
- 治療期間の目安:1回の受診で済む場合から、人工の歯の作り直しや炎症の治療で複数回の通院が必要な場合まで、原因によって異なり、治療後の経過にも個人差がある
- 主なリスク・副作用:処置後に再び緩む、噛み合わせの違和感、炎症の治療後も骨や歯ぐきが元に戻らない、状態によってはインプラントを残せない場合がある
- 本記事の医療情報は一般的な情報提供を目的としており、医師による診断や治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関へのご相談をおすすめします。
- 医療・健康に関する情報は変更される場合があります。実際の受診・治療については医療機関へご確認ください。


