オールオン4は、上の歯だけ(上顎のみ)に行うこともできる治療です。下の歯が健康に残っているか、上顎に必要な骨があるか、上顎洞(鼻の横にある空洞)との距離が十分かによって、上だけで完結できるかが決まります。
上の総入れ歯が外れやすい、上顎を覆う部分の違和感がつらいといった理由から、上顎だけ固定式の人工歯に替えたいと考える方もいます。適応や治療の結果は、お口の状態によって一人ひとり異なります。
この記事でわかること
- オールオン4を上だけ行うケースと、上下両方との違い
- 上だけで完結できる条件と、下の歯の治療が先に要る場合
- 検査から最終的な人工歯までの流れと期間の目安
- 上顎の骨・上顎洞と、下の歯との噛み合わせで気をつけること
- 総入れ歯・個別インプラントなどとの比較と、決める前の確認点
オールオン4は上だけ(上顎のみ)でもできる?
オールオン4を上だけ行うとは、上顎に4本(骨の状態によっては5〜6本)のインプラントを埋め、連結した固定式の人工歯をその上に装着する治療です。下の歯には手を加えず、片顎だけで完結させます。
上だけが検討される主なケース
代表的なのは、上の総入れ歯に悩みがあり、下は自分の歯やブリッジで問題なく噛めているケースです。上の総入れ歯には、話すときに外れやすい、上顎を覆う床(しょう)の違和感が強い、味や温度を感じにくいといった悩みがあります。
上の総入れ歯は、上顎全体を覆う床で吸着させて安定させます。オールオン4に移ると、上顎を広く覆う部分をなくした設計を選びやすくなり、取り外して洗う手間も減ります。
ただし、固定式に替えること自体が目的になると、骨の量や上顎洞の位置、下の歯との噛み合わせといった確認が後回しになりがちです。希望と、医学的に上だけで治療できるかどうかは、分けて考えましょう。
上下両方との違い
下の歯が健康で、上だけで治療を終えられる場合は、手術の範囲、費用、治療期間が片顎分で済みます。
一方で、下の歯や入れ歯との噛み合わせを新たに整え、治療後も管理を続ける必要があります(詳しくは後述の「下の歯・入れ歯との噛み合わせ」)。
オールオン4そのものの仕組みや治療の流れ、メリット・デメリットは、次の記事で確認できます。

上だけで完結できる条件と、難しい場合
上だけで完結しやすいのは、上顎の多くの歯を失っている(または保存が難しい)一方で、下の歯がしっかり機能しているケースです。そのうえで、上顎の骨、全身の状態、治療後のメンテナンスに通えるかを確認します。
上の歯を多く失い、下の歯が健康に残っている
上が総入れ歯、あるいは進行した歯周病などで保存の難しい歯が多い場合、1本ずつインプラントを入れるより、少ない本数で上顎全体を支えるオールオン4が選択肢に入ります。
下の歯が自分の歯やブリッジで安定していれば、下顎まで治療する必要性は下がります。反対に、下の歯に歯周病や強いすり減り、入れ歯の不安定さがあるときは、上下を含めた治療計画を立てます。
下の歯並び・噛み合わせに先に治療が要る場合
下の歯が残っていても、歯並びの高さがそろっていない、傾いている歯があるといった状態では、上の新しい人工歯と正しく噛み合いません。このようなときは、下の歯の治療や調整を先に行ったうえで、上顎の治療に進みます。
インプラント治療の計画では、上下の歯の対合関係や、奥歯で噛む位置が安定しているかを重視します。
上顎の骨の量と全身の状態
インプラントを支える骨の量と質は、検査で確かめます。上顎の奥は上顎洞が近く、骨の高さが足りなくなりがちです。その場合の対応は、後述の「上顎の骨と上顎洞」で説明します。
全身面では、糖尿病、骨粗しょう症、心疾患、抗血栓薬・ビスフォスフォネート製剤・ステロイド薬の服用、喫煙が、手術のリスクや傷の治り、インプラントと骨の結合に関わります。主治医との連携や計画の調整が必要になることもあるため、持病や飲んでいる薬は必ず伝えてください。
喫煙は、インプラント治療の成功率を下げる要因です。日本口腔インプラント学会は、加熱式たばこにも紙巻たばこと同じ害があるとし、インプラント治療の前に禁煙するとインプラントの成功率が高まるとしています。
上だけのオールオン4の治療の流れと期間
検査から装着後のメンテナンスまで、一般的なインプラント治療と同じ順に進みます。
- 相談・検査:歯科用CTで上顎の骨の量や上顎洞の位置、下の歯の状態、噛み合わせを確認する
- 治療計画:インプラントの本数と位置、骨を補う処置の要否、仮歯の方法、費用と期間の説明を受ける
- 抜歯・埋入手術:保存の難しい歯を抜き、上顎にインプラントを埋める。骨を補う処置は、手術の前に別に行うか、同時に行う
- 仮歯の装着:骨の状態に応じて、固定式の仮歯か仮の入れ歯を使う
- 治癒期間:インプラントと骨が結合するのを待つ
- 最終的な人工歯の装着:型を取って作製し、噛み合わせを調整して装着する
- メンテナンス:定期的に通院し、インプラント周囲の状態と噛み合わせを確認する
インプラントが骨と結合するまでの期間は、骨の状態によって異なります。日本口腔インプラント学会は、インプラントを埋めたあと、下の顎で2〜3か月程度、上の顎で4〜6か月程度おいてから型を採り、歯を作るとしています。埋入した直後に仮歯を付ける方法(即時荷重)もあり、日本歯科医学会「歯科インプラント治療指針」では、即時荷重の開始時期を埋入直後あるいは1週以内としています。日本口腔インプラント学会の「よくあるご質問」によると、即時荷重を行っても治療の開始から終了までの期間はあまり変わらず、症例の選択が難しく、術者の経験と技術が必要な治療です。
上顎洞の底を持ち上げる処置や骨造成を行う場合は、その治りを待つ分だけ期間が長くなります。最終的な人工歯が入るまでの期間は、検査のあとに担当医から示される計画で確かめてください。
上顎ならではの注意点とリスク
上だけのオールオン4で特に配慮されるのは、上顎の骨と上顎洞、そして下の歯との噛み合わせです。精密検査と治療計画で備えますが、リスクをゼロにはできません。
上顎の骨と上顎洞
上顎の奥のほうは、上顎洞が近い部位です。歯を失ってから時間がたつと骨がやせ、上顎洞との距離がさらに縮まります。
骨の高さが足りないときは、次のような方法が検討されます。
- 傾斜埋入:後ろ側のインプラントを斜めに埋め、骨のある位置を使う
- サイナスリフト・ソケットリフト:上顎洞の底を持ち上げ、骨を補う
- 別の設計:骨の状態によっては、本数を増やす設計や入れ歯のほうが適する
上顎洞に近い部位の手術では、上顎洞炎や、上顎洞へのインプラント・器具の迷入が起こることがあります。副鼻腔炎の治療歴がある方、鼻の症状で耳鼻科に通っている方は、検査の段階で伝えてください。
下の歯・入れ歯との噛み合わせ
上を固定式にすると、噛む力の伝わり方が変わり、下の歯や顎の関節に負担が偏りやすくなります。
下が自分の歯なら、天然歯の強い力が上の人工歯に加わり、人工歯のすり減りや破損、ねじの緩みにつながることがあります。下が入れ歯なら、噛む力で入れ歯が動いたり、すり減ったりしやすくなります。歯ぎしりや食いしばりがある方は、就寝時にナイトガード(歯を守るマウスピース)を勧められる場合があります。
治療後も定期的に噛み合わせを確認し、必要に応じて調整を受けることが、長く使うための前提です。
主なリスク・副作用
術後の腫れ・痛み・出血、内出血、感染、しびれ、インプラントが骨と結合しない定着不全、上顎洞炎、インプラント周囲炎、人工歯やねじの破損、再手術が必要になる可能性などが挙げられます。
上だけの費用の考え方と保険の扱い
オールオン4の費用は、インプラントの本数、骨造成や上顎洞の処置の有無、人工歯の素材、医院の料金体系によって異なります。手術の内容によっては静脈内鎮静法などが加わることもあるため、広告の最低価格ではなく、検査後の見積もりで総額と含まれる項目(検査・手術・仮歯・最終的な人工歯・メンテナンス・保証)を確認しましょう。費用の内訳や上下両方の場合の考え方は、オールオン4の費用の目安は?注意点や治療のメリットを解説で解説しています。
歯周病や加齢で歯を失った場合のオールオン4は、原則として自由診療で、費用は全額自己負担です。腫瘍や外傷などで顎の骨を広い範囲で失った場合や、生まれつきの病気で多くの歯がない場合などで、ブリッジや入れ歯では噛む機能の回復が難しいときは、施設基準を届け出た医療機関であれば保険診療の対象になり得ます。医療費控除も含め、オールオン4は保険適用される?例外の条件と医療費控除・高額療養費の扱いで詳しく説明しています。
参考:厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」別添2(歯科診療報酬点数表に関する事項)
上顎のほかの選択肢との比較
上の歯を多く失った場合は、上だけのオールオン4のほかに、複数本の個別インプラント、総入れ歯、インプラントオーバーデンチャーも選択肢です。
| 治療法 | 手術 | 取り外し | 費用 | 向いている考え方 |
|---|---|---|---|---|
| オールオン4(上だけ) | 必要 | 固定式 | 自由診療。本数・追加の処置で変わる | 少ない本数で上顎全体を固定式にしたい |
| 個別インプラント(複数本) | 必要 | 固定式 | 自由診療。本数・材料で変わる | 残っている歯を生かしつつ、失った部分だけ補いたい |
| 総入れ歯(上顎) | 原則不要 | 取り外し式 | 保険診療と自由診療がある | 手術を避けたい、費用を抑えたい |
| インプラントオーバーデンチャー | 必要 | 取り外し式 | 自由診療。本数・装置で変わる | 入れ歯の安定を高めたい、少ない本数で済ませたい |
個別インプラントは、本数が増えるほど手術の負担と費用が大きくなり、上顎では骨を補う処置が加わる場合もあります。総入れ歯は手術がいらない反面、外れやすさや上顎を覆う違和感は残りやすい方法です。インプラントオーバーデンチャーは、インプラントを支えにして入れ歯を安定させる、取り外し式の方法です。
どれが合うかは、失った歯の本数と位置、骨の状態、全身の状態、費用、手入れへの考え方で変わります。
上だけで決める前に確認したいこと
カウンセリングでは、次の点を具体的に聞いておくと、治療後の「思っていたのと違う」を減らせます。
- 検査:歯科用CTで上顎の骨と上顎洞を確認したか。上顎だけで完結できる根拠は何か
- 追加の処置:骨造成や上顎洞の処置が必要か。必要な場合の費用と期間
- 仮歯:手術後すぐに仮歯を付けられるか。難しい場合はどう過ごすか
- 噛み合わせ:下の歯や入れ歯との噛み合わせをどう整え、治療後にどう管理するか。ナイトガードは必要か
- 費用:税込の総額と内訳、追加費用が出る条件、保証の範囲と条件
- 治療後:メンテナンスの頻度と費用
手術を急がせる説明や、内訳のはっきりしない見積もりには注意が必要です。迷ったときは、別の歯科医院でセカンドオピニオンを受け、治療方針や費用を比べるのも一つの方法です。
オールオン4を上だけ行う場合のよくある質問
まとめ
オールオン4は、上の歯だけ(上顎のみ)に行うこともできます。上だけで完結しやすいのは、上の歯を多く失い、下の歯が健康に残っているケースです。
上顎の奥は上顎洞が近く骨の高さが足りなくなりがちで、骨を補う処置が加わると費用と期間が増えます。上だけを固定式にしたあとは、下の歯との噛み合わせの管理とメンテナンスが欠かせません。
総入れ歯や個別インプラント、インプラントオーバーデンチャーも含めて比べ、検査結果をもとに担当医と相談して決めましょう。

医療法人煌潤会 赤羽駅前歯科 院長
西川 健太(にしかわ けんた)先生
日本大学松戸歯学部卒。国際口腔インプラント学会(ISOI)認定医・専門医、DGZI Japan認定医、厚生労働省認定臨床研修指導医。
インプラント治療歴25年以上、手術実績は通算1万本以上。
ストローマン社エクセレンスパートナーに選出され、ザイゴマインプラント等の難症例にも対応する。
医療広告について
自由診療に関する詳細内容
- 治療内容:保存が難しい歯の抜歯、上顎への4〜6本程度のインプラント埋入、仮歯の装着、治癒期間後の最終的な人工歯の装着、定期メンテナンス
- 費用(税込)の目安:インプラントの本数、骨造成や上顎洞の処置の有無、人工歯の素材、医院の料金体系によって異なる。検査後の見積もりで、総額と含まれる項目(検査、抜歯、静脈内鎮静法、手術、仮歯、最終的な人工歯、メンテナンス、保証)を確認する
- 治療期間・回数の目安:インプラントを埋め込んだあと、骨と結合するまで下の顎で2〜3か月程度、上の顎で4〜6か月程度おいてから人工歯を作る(日本口腔インプラント学会「よくあるご質問」)。手術の直後に仮歯を付ける方法(即時荷重)でも、治療の開始から終了までの期間はあまり変わらない。骨造成や上顎洞の処置、歯周病の治療を伴う場合は、さらに長くなる。埋めたあとに歯ぐきをもう一度開く手術がない方法(1回法)とある方法(2回法)があり、抜歯や骨を補う処置を別に行う場合はその手術も加わる。通院は検査・手術・型取り・人工歯の装着と、治療後の定期的なメンテナンスで続く。期間や経過には個人差がある
- 主なリスク・副作用:術後の痛み・腫れ・出血・内出血、感染、しびれ、上顎洞炎、上顎洞へのインプラントや器具の迷入、定着不全、インプラント周囲炎、仮歯や人工歯の破損、ねじの緩み、再手術の可能性、全身疾患や服薬による手術リスク
※本記事は一般的な情報を整理したものです。適応、上顎洞の処置の要否、費用、治療期間、保険適用、医療費控除の対象範囲、リスクは、症例や医療機関、制度の条件によって異なります。治療の効果やリスクの程度には個人差があります。個別の診断・治療方針は担当の歯科医師へ、税務上の判断は税務署や税理士へ確認してください。
- 本記事の医療情報は一般的な情報提供を目的としており、医師による診断や治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関へのご相談をおすすめします。
- 医療・健康に関する情報は変更される場合があります。実際の受診・治療については医療機関へご確認ください。


