オールオン4は、原則として公的医療保険の適用外で、全額自己負担の自由診療です。保険が使えるのは、腫瘍や外傷などで顎の骨が広い範囲で失われた場合と、生まれつきの病気などで顎の骨が十分に育っていない場合や多くの歯が欠けている場合です。いずれも、届け出た病院で「広範囲顎骨支持型装置」として治療するケースに限られます。
虫歯や歯周病、加齢で歯を失った場合は、この例外に当たりません。保険が使えないときも、噛む機能を回復するための治療費は医療費控除の対象になり得ますが、自由診療の費用に高額療養費制度は使えません。
この記事でわかること
- オールオン4が保険適用外になる理由
- 例外的に保険が使える症例と医療機関の条件
- 自分が例外に当たるかの確かめ方
- 医療費控除・高額療養費・分割払いの考え方
- 保険が使える入れ歯・ブリッジとの違い
オールオン4は原則として保険適用外
オールオン4は、片顎に4本程度のインプラント(人工歯根)を埋め込み、つながった人工歯を固定する治療法です。歯を多く失った場合や、総入れ歯が合わない場合の治療法(選択肢)の1つです。
治療の流れやメリット・デメリットは、オールオン4とは?総入れ歯との違い、メリット・デメリット、治療の流れで詳しく紹介しています。
保険適用外になる理由
公的医療保険で受けられる歯科治療は、国が定めた診療報酬点数表に載っている治療に限られ、使える材料や方法も決まっています。歯を失ったときの治療として点数表に載っているのは、主に入れ歯やブリッジです。
インプラントを使う治療が点数表に載っているのは、「広範囲顎骨支持型装置」として算定できる特殊な症例だけです。そのため、一般的な歯の欠損に対するオールオン4は保険の対象にならず、検査から手術、人工歯までの費用を全額自己負担で支払います。
インプラントの保険適用が今後広がるかについては、次の記事で解説しています。

例外的に保険適用になる条件(広範囲顎骨支持型装置)
インプラントが保険の対象になるのは、従来のブリッジや入れ歯では噛む機能を取り戻すのが難しい方のうち、厚生労働省の通知で定められた症例に当てはまる場合です。治療できる医療機関にも条件があり、両方を満たすことが前提です。
対象になる症例
通知では、次のいずれかに当てはまることが条件とされています。
- 腫瘍、顎骨嚢胞、顎骨骨髄炎、外傷などで顎の骨が広い範囲で失われた(骨移植などで再建した場合を含む)
- 生まれつきの病気(外胚葉異形成症や唇顎口蓋裂など)で、歯を支える土台(顎堤)が十分に育っていない
- 生まれつきの病気(外胚葉異形成症など)で、顎の3分の1程度以上にわたって連続して歯がない
- 6歯以上の先天性部分無歯症や萌出不全で、顎の3分の1程度以上の歯がない、または生まれつき連続して3歯以上の歯がないことで噛み合わせに異常がある(18歳未満に限る)
1つ目の「広い範囲」は、上顎なら連続した4歯分以上の骨の欠損か、上顎洞や鼻とつながる欠損、下顎なら連続した4歯分以上の歯槽骨の欠損か、下顎の骨を区域ごと切り取る手術(下顎区域切除)以上の顎骨欠損がある場合です。2つ目・3つ目の先天性の病気は、医科の主治医の診断にもとづくものに限られます。4つ目の萌出不全は、前歯・小臼歯の永久歯3本以上が生えてこず、歯ぐきを開く手術が必要なものが対象です。
歯周病や加齢で骨がやせた場合は、欠損が広くても対象から外れます。多くの方がオールオン4を検討するきっかけになる「歯周病で歯を失った」「総入れ歯が合わない」といった理由では、保険は使えません。
参考:厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」別添2 歯科診療報酬点数表に関する事項(令和8年3月5日 保医発0305第6号、J109 広範囲顎骨支持型装置埋入手術)
治療できる医療機関の条件
保険でこの治療を行えるのは、施設基準を満たし、地方厚生局に届け出た保険医療機関に限られます。主な基準は次のとおりです。
- 歯科または歯科口腔外科がある病院であること
- 歯科・歯科口腔外科の経験5年以上、かつこの治療の経験3年以上の常勤歯科医師が2名以上いること
- 当直体制や、医療機器・医薬品の安全管理の体制、必要な検査機器が整っていること
一般の歯科診療所は、この基準の「病院であること」に当たりません。例外の条件に当てはまる場合も、大学病院や総合病院の歯科口腔外科などで治療を受けることになります。
参考:厚生労働省「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」(令和8年3月5日 保医発0305第8号)
自分が例外に当たるか確かめる流れ
顎の骨の手術を受けたことがある方や、生まれつきの病気で歯が少ない方は、次の順で確かめると進めやすくなります。
- かかりつけの歯科医院や、病気の治療を受けた病院の主治医に、保険でのインプラント治療の対象になり得るか相談する
- 対象になる可能性があれば、届け出た病院の歯科口腔外科などを紹介してもらう
- 紹介先の病院で検査を受け、条件に当てはまるかの診断を受ける
届け出た医療機関は、各地方厚生局が公表している施設基準の届出受理状況で調べられます。保険が適用された場合も、自己負担の割合に応じた窓口負担はかかります。また、保険で作る装置の形や材料は保険のルールの範囲で決まるため、自由診療のオールオン4と同じ内容になるとは限りません。
保険が使えないときに費用負担を軽くする方法
保険が使えない場合も、医療費控除で税の負担が軽くなることがあり、分割払いを選べる医院もあります。
オールオン4の費用の目安や内訳は、オールオン4の費用の目安は?注意点や治療のメリットを解説で詳しく解説しています。
医療費控除は対象になり得る
医療費控除は、1年間に支払った医療費が一定額を超えたときに、確定申告で所得税の負担が軽くなる制度です。噛む機能を回復するためのインプラント治療は、自由診療でも対象になり得ます。
治療費そのものが安くなるわけではなく、戻る金額は所得や医療費の合計によって変わります。計算方法や申告の手順は、インプラントの医療費控除はいくら戻る?計算方法と確定申告のやり方をご覧ください。
参考:国税庁「No.1122 医療費控除の対象となる医療費」
高額療養費制度は使えない
医療機関や薬局の窓口で支払った医療費が月ごとの上限額を超えたとき、超えた分が支給されるのが高額療養費制度です。令和8年8月からは、年単位の上限額(年間上限)も設けられています。対象は保険適用される診療の自己負担額で、自由診療のオールオン4の費用は含まれません。医療費控除とは別の制度なので、混同しないように注意しましょう。
参考:
厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」
デンタルローン・院内分割払い
一度に支払うのが難しい場合は、信販会社のデンタルローンや、医院独自の分割払いを利用できることがあります。ローンには金利や手数料がかかるため、支払総額が現金払いより増える点に気をつけてください。取り扱いの有無や条件は医院ごとに違うため、見積もりの段階で確認しておくと計画を立てやすくなります。
保険が使える治療との比較
歯を多く失ったときの治療には、自由診療のオールオン4のほかに、保険が使える総入れ歯・部分入れ歯・ブリッジがあります。どれが合うかは、残っている歯や骨の状態、全身の健康状態、費用やお手入れへの考え方で変わります。
| 治療法 | 保険適用 | 手術 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| オールオン4 | 原則適用外(自由診療) | 必要 | 固定式。装着後も定期的な管理が必要 |
| 総入れ歯(保険) | あり | 不要 | 取り外して清掃できる。すべての歯を失った場合に使う |
| 部分入れ歯(保険) | あり | 不要 | 残っている歯に金具をかけて支える |
| ブリッジ(保険) | あり(条件あり) | 不要 | 両隣の歯を削って土台にする。欠損が少ない場合に向く |
入れ歯との違い
保険の入れ歯は、手術をせずに作れて費用を抑えやすい治療です。取り外して洗えるため、お手入れがしやすいのも特徴です。一方で、装着したときの違和感や噛み心地が気になる方もいます。
保険で作る入れ歯は、使える材料や設計が決められています。素材や装着感にこだわりたい場合は、自由診療の入れ歯も選べますが、保険の入れ歯とは費用や特徴が異なります。手術を避けたい方や、全身の病気で外科処置が難しい方には、入れ歯が現実的な選択肢になることがあります。
ブリッジとの違い
ブリッジは、失った歯の両隣の歯を削って土台にし、つながった人工歯で補う方法です。条件を満たせば保険で治療でき、手術も要りません。
ただし、健康な歯を削る必要があり、土台の歯に負担がかかります。失った歯が多い場合や、両隣に支えとなる歯がない場合は適応になりにくく、入れ歯やインプラントを使う方法が候補になります。
よくある質問
まとめ
オールオン4は、原則として保険が使えない自由診療です。保険の対象になるのは、腫瘍や外傷などで顎の骨が広く失われた症例や、先天性疾患などで顎の骨の発育が不十分な症例、多くの歯が欠けている症例に限られます。いずれも、施設基準を満たして届け出た病院で治療する場合です。歯周病や加齢で歯を失った場合は対象外です。
費用の負担は医療費控除や分割払いで調整できる場合もありますが、自由診療の費用に高額療養費制度は使えません。保険が使える入れ歯やブリッジも含めて比べ、残っている歯や骨の状態、費用、お手入れの考え方に合う方法を歯科医師と相談して選びましょう。

医療法人煌潤会 赤羽駅前歯科 院長
西川 健太(にしかわ けんた)先生
日本大学松戸歯学部卒。国際口腔インプラント学会(ISOI)認定医・専門医、DGZI Japan認定医、厚生労働省認定臨床研修指導医。
インプラント治療歴25年以上、手術実績は通算1万本以上。
ストローマン社エクセレンスパートナーに選出され、ザイゴマインプラント等の難症例にも対応する。
自由診療に関する詳細内容
- 治療内容:上顎または下顎に4本程度のインプラントを埋め込み、つながった人工歯を固定する治療法です。
- 費用(税込)の目安:本数、骨を増やす処置(骨造成)の有無、人工歯の素材、医院の料金体系によって異なるため、検査後の見積もりで総額と含まれる項目(検査・手術・仮歯・最終的な人工歯・メンテナンス・保証)を確認してください。
- 治療期間の目安:インプラントを埋め込んだあと、骨と結合するまで下の顎で2〜3か月程度、上の顎で4〜6か月程度おいてから最終的な人工歯を作ります(日本口腔インプラント学会「よくあるご質問」)。骨の状態や骨を増やす処置の有無によっては、さらに長くなることがあります。埋め込んだあとに歯ぐきをもう一度開く手術がない方法(1回法)とある方法(2回法)があり、骨を増やす処置を別に行う場合はその手術も加わります。通院は検査・手術・型取り・人工歯の装着と進み、治療後も定期的なメンテナンスが続きます。期間や経過には個人差があります。
- 主なリスク・副作用:外科手術に伴う腫れ・痛み・出血・感染、神経の損傷によるしびれ、上顎洞炎、インプラントが骨と結合しないこと、インプラント周囲炎、人工歯の破損などが起こる可能性があり、起こりやすさや程度には個人差があります。
- 本記事の医療情報は一般的な情報提供を目的としており、医師による診断や治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関へのご相談をおすすめします。
- 医療・健康に関する情報は変更される場合があります。実際の受診・治療については医療機関へご確認ください。


