インプラントの専門医とは?専修医・指導医との違いと歯科医院の選び方、転院の流れ

インプラントの専門医とは?専修医・指導医との違いと歯科医院の選び方、転院の流れ

インプラントの専門医とは、公益社団法人日本口腔インプラント学会が認定する「口腔インプラント専門医」を指すことが多く、正会員歴5年以上で、学会の条件を満たしたうえで専門医試験に合格した歯科医師です。同じ学会には、正会員歴10年以上の「指導医」と、専門医を取得する前の資格として学会が設けている、正会員歴2年以上の「JSOI専修医」もあり、それぞれ条件が違います。

ただし、医院を選ぶときは専門医の資格だけでなく、検査や説明の丁寧さ、治療後のメンテナンスの体制もあわせて比べる必要があります。治療の途中や治療後に医院を変えるときは、使ったインプラントの種類・手術の内容・支払った費用の3つを転院先へ引き継ぎます。

この記事でわかること

  • インプラントの専門医・専修医・指導医・認定医の違いと、資格の調べ方
  • 資格以外に確認したい歯科医院の選び方
  • 治療中・治療後に転院するときの流れと、引き継ぐ情報
  • 治療に不安があるときの相談先
目次

インプラントの専門医とは

日本口腔インプラント学会が認定する資格として「口腔インプラント専門医」があります。学会の市民向けページによると、専門医になるには、学会が指定した研修施設で研修を行い、学会の研修会に参加したうえで、筆記試験と面接試験に合格する必要があります。

認定を受けたあとも、知識を更新するための研修を続ける決まりです。研修の期間は、学会の専門医制度規程で「研修施設に通算して5年以上在籍していること」と定められています。

参考:
日本口腔インプラント学会「口腔インプラント専門医」
日本口腔インプラント学会「専門医の選び方とは?」
日本口腔インプラント学会「専門医制度規程」

医院の広告で「インプラント専門医」を見かけにくい理由

口腔インプラント専門医は、現時点で広告が可能な専門医として厚生労働省に認められていません。日本口腔インプラント学会は、そのため一般の人に向けた広告では表示できないとしています。

厚生労働省の医療広告等ガイドラインで、歯科医師の専門性の資格として広告できるのは、日本歯科専門医機構が認定する専門医と、2021年10月の告示改正より前に届け出ていた5団体の資格です。医療機関のホームページも医療広告の規制の対象ですが、患者が自ら求めて見るホームページなどでは、問い合わせ先の明示などの条件を満たせば、ほかの学会の資格も載せられます。その場合も、単に「専門医」とだけ書くことはできず、認定した団体の名前とあわせて示す必要があります。

このうち、一般社団法人日本歯科専門医機構が認定する専門医は、口腔外科・歯周病・小児歯科・歯科麻酔・歯科放射線・補綴歯科・矯正歯科・歯科保存の8領域です。この中に口腔インプラントは含まれていません。インプラントに関する認定医・専門医の資格は、日本口腔インプラント学会のほかにも、国内外の学会・団体がそれぞれの基準で設けています。医院のホームページなどで資格の記載を見かけたときは、どの学会・団体の、何という資格かまで見ておくと誤解を防げます。

参考:
日本口腔インプラント学会「日本口腔インプラント学会専門医の広告、表示について」
厚生労働省「医療広告等ガイドライン」
厚生労働省「医療広告等ガイドラインに関するQ&A」
日本歯科専門医機構「日本歯科専門医機構認定 専門医・研修施設 一覧」

専門医・専修医・指導医の違い

日本口腔インプラント学会の資格は、正会員歴の長さと、研修・試験などの条件で分かれます。学会が公開している条件は次のとおりです。

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資格正会員歴取得の方法
口腔インプラント指導医10年以上インプラント治療を指導できる知識と技能があり、申請資格の条件を満たしたうえで指導医試験に合格
口腔インプラント専門医5年以上インプラントの知識と技術があり、認定資格の条件を満たしたうえで専門医試験に合格
JSOI専修医2年以上インプラントの知識と技術があり、ケースプレゼンテーション試験の合格などの条件を満たしたうえで申請し、認定を受ける(専門医を取得する前段階の資格)

出典:日本口腔インプラント学会
「口腔インプラント指導医」「JSOI専修医」「口腔インプラント専門医」「JSOI専修医制度規程」

専門医でなければインプラント治療は受けられない?

専門医の資格がなければ治療を受けられない、というわけではありません。日本歯科医学会の「歯科インプラント治療指針」は、まず歯科医師自身の技術や医療機関の設備で、その症例に十分対応できるかを判断するよう求めています。そのうえで、難しいと診断した症例は、治療ができる専門医や指導医などに紹介するとしています。

骨の量が足りない、全身の病気があるなど、治療の難しさは患者さんごとに違います。資格の有無とあわせて、自分の症例をどう診断し、どこまで対応できるかの説明も、医院を選ぶ手がかりです。

参考:歯科インプラント治療指針

インプラント専門医の探し方と歯科医院の選び方

日本口腔インプラント学会のホームページには、専門医・指導医の検索システムがあり、都道府県や資格の種類から専門医・指導医を探せます。医院のホームページで資格の記載を見かけたときも、この検索システムで調べられます。

資格とは別に、学会が医院選びのポイントとして挙げているのは次の点です。

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確認したいこと見るところ
医院が清潔か掃除が行き届き、物が整頓されている
設備が整っているか手術をする場所が整っている、エックス線写真が見やすい
検査が念入りかインプラントを入れる部分だけでなく口全体を検査し、全身の状態も聞いてくれる
説明が丁寧かメリットだけでなくデメリットやインプラント以外の選択肢も示し、費用と期間を説明してくれる

加えて、治療費と治療内容を文書で受け取れるかも確認しておくと、後の行き違いを防げます。歯科医師と約束した治療費や治療法は、文書で残しておくのが望ましいというのが学会の案内です。

インプラントは治療後も定期的なメンテナンスが続くため、通い続けられる場所か、メンテナンスの費用や保証の条件はどうなっているかも、治療を始める前に聞いておくと、治療後に慌てずに済みます。

参考:日本口腔インプラント学会「治療中・術後のトラブル対策」

治療を始める前に確認しておきたい条件は、次の記事でもくわしく取り上げました。

治療中・治療後に歯科医院を変えたいとき

引っ越しや転勤、医院への不安、閉院などをきっかけに、治療の途中や治療後に別の歯科医院へ移りたくなる人もいます。まずは担当の歯科医師に理由を伝えて相談し、これまでの治療の記録を受け取れるようにしておくと、次の医院で引き継ぎやすくなります。

日本口腔インプラント学会は、インプラントのトラブルは原則として最初に治療を行った歯科医師が治療を続けるのが望ましいとしています。インプラントはメーカーが多く、同じメーカーでも種類やサイズが複数あるうえ、手術や人工の歯を入れたときの状況は担当医でないと分からないためです。

参考:日本口腔インプラント学会「治療中・術後のトラブル対策」

治療の段階ごとに確認したいこと

治療がどこまで進んでいるかによって、転院先へ伝える情報や、前もって確認したいことが変わります。主なものは次のとおりで、実際の進め方は症例や医院によって異なります。

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治療の段階確認・準備したいこと
手術前(検査・診断のみ)検査結果やエックス線写真・CTのデータを受け取れるか、転院先で検査をどこまでやり直すか
インプラントを埋め込んだあと、人工の歯を入れる前使ったインプラントのメーカー・種類・サイズ、埋め込んだ部位と手術の内容、転院先がそのメーカーに対応できるか
人工の歯を入れたあと・メンテナンス期インプラントカード(治療履歴カード)、保証を転院後も続けられるか

治療の途中で転院するときは、いまの医院で治療をどこまで進めるか、治療を中断する期間に気をつけることは何かを、担当の歯科医師に聞いておくと安心です。転院先には、表の情報とあわせて、治療を中断している期間も伝えます。

転院先に引き継ぐ情報

学会が、やむを得ず転院するときに転院先へ引き継ぐよう案内している情報は、次の3つです。

  • どのようなインプラントが使われたか
  • どのように手術が行われたか
  • どこまで治療費を支払ったか

日本歯科医学会の指針も、転院後もメンテナンスやトラブルへの対応が適切に行えるよう、手術後に使ったインプラントの情報を記した「歯科インプラント治療履歴カード」などを患者に発行するよう求めています。転院の前に、手元にそろえておきたいものは次のとおりです。

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準備するもの内容入手先・補足
紹介状(診療情報提供書)治療の経過・診断・使ったパーツの情報現在の医院に依頼する。発行に費用がかかる場合がある
インプラントカード(治療履歴カード)メーカー・種類・サイズ・埋め込んだ部位など手術後に受け取っていなければ、現在の医院に確認する
エックス線写真・CTのデータ骨の状態や埋め込んだ位置の画像現在の医院に提供を依頼する
治療計画書・見積書・領収書残りの治療内容と、支払い済みの費用転院先で費用を比べるときにも役立つ
保証書保証の種類・期間・条件転院後の扱いを確かめるために必要

転院先を探すときは、他院で治療を始めたインプラントであることを最初に伝え、使っているメーカーに対応できるか、検査費・診断費・残りの治療費を含めた見積もりを出してもらえるかを確認しましょう。1院だけで決めず、対応の方針と費用を複数の医院で比べてから選ぶと、転院後の食い違いを減らせます。

転院したときの費用と保証

インプラント治療は自由診療で、費用は医院ごとに異なります。転院先で検査・診断をやり直したり、残りの治療を改めて契約したりすると、総額が当初の見積もりより高くなることがあります。学会の案内では、費用の主な項目は診査・診断、インプラントの手術、骨の量が足りない場合の手術などです。見積もりにどの項目が含まれるかと、税込の総額を確認しましょう。

保証は種類によって、転院後の扱いが変わります。自分の保証がどれに当たるかは、保証書に書かれています。

保証の種類転院後の扱い確認しておきたいこと
医院独自の保証転院すると対象外になる場合がある残りの期間・適用の条件・転院時の扱い
メーカーの保証保証書やメーカーの条件によって扱いが異なる対象の範囲・必要な書類・転院先で対応できるか
第三者機関の保証保証会社や認定医院の条件によって扱いが異なる転院先が対象の医院か・定期メンテナンスの条件

引っ越しの予定がある場合は、転院したときの保証の扱いも、治療を始める前の確認事項に入れておきたいところです。

参考:日本口腔インプラント学会「インプラントの費用は?」

治療に不安やトラブルがあるときの相談先

説明がよく分からない、治療の結果に納得できないといったときは、早めに担当の歯科医師へ疑問を具体的に伝えましょう。専門用語を理解できないままにしておくと食い違いの原因になるため、後戻りできる早い時期に相談するよう学会も呼びかけています。

ほかの歯科医師の意見も聞きたいときは、日本口腔インプラント学会の「口腔インプラント治療相談窓口」を利用できます。窓口は学会が公開している一覧(PDF)に載っている医療機関で、相談は有料です。医療機関のホームページで診療時間を確認し、予約をとって受診します。

人工の歯が外れた・欠けた、インプラントがぐらつく、歯ぐきが腫れて膿が出る、かむと痛むといった症状があるときは、そのままにせず受診してください。担当の医院と連絡がとれない場合は、他院で入れたインプラントの相談を受け付けている歯科医院や、口腔外科のある医療機関を受診する方法もあります。独立行政法人国民生活センターも、インプラント治療で不具合が生じた場合は、他の医療機関への相談も検討するよう呼びかけています。

参考:
国民生活センター「あなたの歯科インプラントは大丈夫ですか」

インプラントを除去(撤去)する場合と、除去したあとに選べる治療は、次の記事で解説しています。

インプラントの専門医と転院に関するよくある質問

インプラントの認定医と専門医の違いは何ですか?

「認定医」「専門医」などの名称と認定の基準は、学会や団体によって異なります。日本口腔インプラント学会の認定制度のページで案内されている資格は、口腔インプラント専門医・指導医・JSOI専修医などです。ほかの団体の「認定医」と比べるときは、その団体が定める条件を確認してください。

専修医がいる歯科医院なら、難しい症例も任せられますか?

専修医かどうかだけでは判断できません。JSOI専修医は、学会が口腔インプラント専門医を取得するための前段階と位置づけている資格で、専門医・指導医とは求められる正会員歴や研修の条件が違います。骨の量や全身の状態など、治療の難しさは人によって違うため、検査の結果をもとに、その医院でどこまで対応できるかの説明を受けてから決めても遅くありません。

インプラント治療の途中でも転院できますか?

治療の途中でも転院できる場合があります。ただし、使ったインプラントや手術の内容が分からないと、転院先で治療を続けにくくなります。担当の歯科医師に転院を考えている理由を伝え、治療がどこまで進んでいるかと、引き継げる情報を確認してから判断してください。

インプラントカードをもらっていない場合はどうすればいいですか?

治療を受けた歯科医院に問い合わせ、カルテからメーカーやサイズなどの情報を確認できるか相談してください。閉院などで連絡がとれない場合は、転院先でエックス線写真やCTを撮り、形からメーカーを推測することもありますが、特定までに時間や追加の費用がかかることがあります。

転院すると保証は受けられなくなりますか?

保証の種類によって異なります。医院独自の保証は転院すると対象外になる場合があり、メーカーの保証や第三者機関の保証は条件によって扱いが変わります。保証書で種類と条件を確かめ、転院先が対象の医院かを事前に問い合わせてください。

まとめ

インプラントの専門医は、日本口腔インプラント学会が試験を経て認定する資格で、同じ学会の指導医・専修医とは条件が違います。資格は学会の検索システムで調べられますが、医院を選ぶときは、検査や説明の丁寧さ、費用を文書で示してもらえるか、治療後のメンテナンスまで通えるかもあわせて比べましょう。

治療の途中や治療後に医院を変えたいときは、まず担当の歯科医師に相談し、インプラントの種類・手術の内容・支払った費用の3つを引き継げるよう準備してから転院先を探しましょう。

※本記事の資格制度に関する説明は、各学会・団体と厚生労働省の公開情報をもとに編集部がまとめたものです。

参考文献・出典
西川 健太先生

医療法人煌潤会 赤羽駅前歯科 院長

西川 健太(にしかわ けんた)先生

日本大学松戸歯学部卒。国際口腔インプラント学会(ISOI)認定医・専門医、DGZI Japan認定医、厚生労働省認定臨床研修指導医。

インプラント治療歴25年以上、手術実績は通算1万本以上。

ストローマン社エクセレンスパートナーに選出され、ザイゴマインプラント等の難症例にも対応する。

医療法人煌潤会 赤羽駅前歯科

自由診療に関する詳細内容

インプラント治療は、原則として公的医療保険が適用されない自由診療のため、費用は全額自己負担です。

  • 治療内容:顎の骨に人工の歯根(インプラント体)を埋め込み、骨と結合したあとに人工の歯を取り付ける。骨の量が足りない場合は、骨を増やす手術を行うことがある
  • 費用(税込)の目安:本数、骨を増やす手術の有無、人工の歯の素材、医院の料金体系によって異なるため、検査後の見積もりで総額を確認する
  • 治療期間の目安:インプラント体を埋め込んだあと、通常3〜4か月の治癒期間をおいてから人工の歯を作る(日本歯科医学会「歯科インプラント治療指針」)。骨を増やす手術を行う場合などは、さらに長くなる
  • 主なリスク・副作用:手術後の痛み・腫れ・出血、感染、しびれなどの知覚の異常、骨との結合不全、インプラント周囲炎、人工の歯やネジの緩み・破損
医療広告について
  • 本記事の医療情報は一般的な情報提供を目的としており、医師による診断や治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関へのご相談をおすすめします。
  • 医療・健康に関する情報は変更される場合があります。実際の受診・治療については医療機関へご確認ください。
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著者情報

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