インプラントの種類は、骨に埋め込む部分の「構造」「形状」「素材」、その上に付ける「人工の歯(上部構造)」、そして「治療法」の違いで分かれます。どれか1つが誰にでも合うわけではなく、骨の量や硬さ、失った歯の本数、見た目の希望などをふまえて、歯科医師が組み合わせを提案します。
国内では多くのメーカーが製品を販売しており、医院で「〇〇社の〜タイプ」と説明されても違いが分かりにくいものです。種類を分け方ごとに整理し、メーカーの違いと、治療を受ける前に確認しておきたいことをまとめました。
この記事でわかること
- インプラントの種類を分ける5つの軸と、それぞれの違い
- 人工の歯(上部構造)の素材と、固定する方法の違い
- 1回法・2回法、オールオン4、骨造成など治療法による違い
- 国産・海外メーカーの考え方と、医院で確認しておきたいこと
インプラントの種類一覧|5つの分け方で比較
インプラントは、顎の骨に埋め込む「インプラント体(人工歯根)」、その上に取り付ける「アバットメント(支台部)」、歯の部分にあたる「上部構造(人工の歯)」の3つのパーツで構成されます。「種類」と呼ばれる違いの多くは、このパーツの作りや素材、治療の進め方の違いです。
| 分け方 | 主な種類 | 違いが出るところ |
|---|---|---|
| 構造 | ワンピース/ツーピース | インプラント体とアバットメントが一体か、分かれているか |
| 形状・表面 | スクリュー(ネジ状)/シリンダー(円筒形)、表面処理 | 埋め込んだときの固定のされ方、骨との結合 |
| 素材 | チタン・チタン合金、ジルコニアなど | 骨との結合の実績、見た目、国内での承認の有無 |
| 人工の歯(上部構造) | 素材、ネジ固定/セメント固定、取り外し式 | 見た目、修理のしやすさ、手入れの方法 |
| 治療法 | 1回法/2回法、オールオン4、骨造成など | 手術の回数、治療期間、受けられる条件 |
日本歯科医師会は、国内で20数種類のインプラントが販売されていると紹介しています。製品によって組み合わせが違うので、医院で説明を受けるときは、どの分け方の話かを意識すると整理しやすくなります。
参考:公益社団法人日本歯科医師会「テーマパーク8020 インプラント」
構造による種類|ワンピースとツーピース
構造で分けると、インプラント体とアバットメントが一体になった「ワンピースタイプ」と、インプラント体にアバットメントを連結する「ツーピースタイプ」があります。
| 構造 | 特徴 | 検討するときの注意 |
|---|---|---|
| ワンピース | インプラント体とアバットメントが一体。手術は1回法で行う | 埋め込む向きや部品の選び方の自由度が限られることがある |
| ツーピース | インプラント体とアバットメントを連結する。骨や歯ぐきの状態に合わせて部品を選びやすい | 1回法・2回法のどちらでも行われる。連結部のネジが緩むことがある |
ツーピースタイプは「手術が2回必要」と思われがちですが、インプラント体を埋め込むときにアバットメントも連結すれば、手術は1回で済みます。どちらの構造を使うかは、骨の量や硬さ、治療計画によって決まります。
形状と表面処理による種類|スクリューとシリンダー
インプラント体の形は、ネジ状の「スクリュータイプ」と、円筒形の「シリンダータイプ」に分かれます。日本歯科医師会によると、スクリュータイプは埋め込んだときに骨で固定されやすく(初期固定)、噛む力を周りの骨に分散できることから、多くの製品で採用されています。
インプラント体の大きさは、直径が3〜5mm、長さが6〜18mmほどです。どのサイズを使うかは、CTで確認した骨の幅や高さ、神経や上顎洞(上の奥歯の上にある空洞)までの距離によって決まります。
インプラント体の表面の加工(表面処理)は、骨との結合をより速く、確実に得るためのものです。加工の方法は製品ごとに異なり、どの加工がすべての人に優れているとはいえません。
素材による種類|チタンとジルコニア
インプラント体の素材は、主にチタンまたはチタン合金です。チタンは骨と直接結合する性質(オッセオインテグレーション)があり、噛む力に耐える強度と体へのなじみやすさから、現在のインプラントの主流です。
金属を使わないジルコニア(セラミックの一種)のインプラント体は、ヨーロッパを中心に製品化され臨床応用も進んでいます。一方、日本口腔インプラント学会の指針では、日本では薬事未承認のため使用は難しいとされています。チタンとの違いは、次の記事で解説しています。

アバットメントの素材は、チタン、チタン合金、ジルコニアなどです。前歯のように歯ぐきが薄い部位では、金属の色が透けて見えないよう、アバットメントや人工の歯の素材を選ぶことがあります。金属アレルギーが心配な場合は、検査の段階で伝えておくと、素材を選ぶ際の判断材料になります。
参考:公益社団法人日本口腔インプラント学会「よくあるご質問」、公益社団法人日本口腔インプラント学会「口腔インプラント治療指針2024」
人工歯(上部構造)の種類
人工の歯は、見た目や噛み心地に直接関わる部分です。素材、固定の方法、取り外しできるかどうかで分かれます。
人工の歯の素材
日本歯科医師会は、上部構造の素材として、レジン(歯科用プラスチック)、セラミック、セラミックとレジンを混ぜたハイブリッドセラミック、金合金を挙げています。セラミックにはジルコニアなど複数の種類があり、医院によって扱う素材や名称は異なります。
素材によって、色や透明感、割れにくさ、すり減りやすさ、費用が変わるため、前歯では見た目、奥歯では強い力への耐えやすさを重視して選びます。
固定する方法|ネジ固定とセメント固定
人工の歯をアバットメントに固定する方法は、ネジで留める「スクリュー固定」と、接着用のセメントで留める「セメント固定」の2つです。
| 固定方法 | 利点 | 注意点 |
|---|---|---|
| スクリュー固定 | 人工の歯が欠けたときや、インプラントの状態を確認したいときに、歯科医院で取り外せる | 噛む面にネジを通す穴があく |
| セメント固定 | ネジ穴がなく見た目がよい | 基本的に取り外せないため、修理や診査がしにくい |
どちらの方法でも、患者さん自身で人工の歯を外すことはできません。
取り外しできるタイプ(インプラントオーバーデンチャー)
インプラント体の上に「アタッチメント」という装置を付け、入れ歯をしっかり固定する方法です。入れ歯は患者さん自身で取り外して手入れができます。歯がすべてない場合、インプラント体を4本以上埋め込むときは固定式のブリッジ、それより少ない本数のときはオーバーデンチャーになると日本歯科医師会は説明しています。手術の負担や費用を抑えたい場合にも選ばれます。
治療法による種類
同じ製品のインプラントでも、手術の進め方や、骨の状態に合わせた処置によって治療の流れが変わります。
1回法と2回法
1回法は、インプラント体を埋め込む手術を1回で終える方法です。2回法は、インプラント体を埋め込んで歯ぐきを閉じ、骨と結合したあとに、もう一度歯ぐきを開いてアバットメントを連結します。日本歯科医師会によると、骨の量が十分にあり硬い場合は1回法、骨の量が少なく骨の移植が必要な場合や骨が軟らかい場合は2回法が選ばれます。
オールオン4
歯がすべてない顎に4本のインプラント体を埋め込み、そのうち2本を斜めに入れて、手術と同じ日に仮の歯を固定する方法です。手術当日から仮の歯を使えるのが特徴ですが、骨の量が十分にあり、硬いことが条件で、CTの分析をもとに位置や角度を細かく計画する必要があります。
骨が足りないときの骨造成
インプラント体を埋め込む骨が足りない場合は、骨を補う処置(骨造成)を行います。主な方法は次のとおりです。
- 骨移植:顎の別の場所などから採った骨や人工の骨を、足りない部分に移植する
- GBR法(骨再生誘導法):骨を増やしたい部分を薄い膜で覆い、骨が再生する空間を確保する
- サイナスリフト・ソケットリフト:上の奥歯の骨が薄い場合に、上顎洞の底の粘膜を持ち上げて骨を補う
骨造成を行うと、移植した骨が落ち着くまで時間がかかるため、治療期間は長くなります。
手術の負担や期間を抑える方法
このほか、歯ぐきを大きく切開せずに埋め込む「フラップレス」、抜歯と同じ日にインプラント体を埋め込む「抜歯即時埋入」、埋め込んだ直後や早い時期に人工の歯を付ける「即時荷重・早期荷重」があります。いずれも骨の状態や炎症の有無などの条件がそろった場合に選ばれる方法で、誰でも受けられるわけではありません。
国産・海外メーカーの違い
国内で使われている海外メーカーの例はストローマン、ノーベルバイオケア、デンツプライシロナ(アストラテック)、ジンヴィなど、国内メーカーの例は京セラ、ジーシーなどです。
メーカーによって、インプラント体の形や表面処理、部品の種類、治療計画に使うデジタル機器との連携などが異なります。ただし、海外製か国産かで一律に優劣が決まるわけではありません。判断の材料になるのは、次のような点です。
- 医院がそのメーカーの製品を使い慣れているか
- 部品の規格はメーカーや製品で異なるため、将来の交換や修理で同じ部品を取り寄せられるか
- 引っ越しなどで通院先が変わったときに、同じメーカーを扱う医院を探しやすいか
自分に合うインプラントの種類を選ぶには
インプラントの種類は、患者さんが一覧から選ぶものではなく、精密検査の結果をもとに、歯科医師と相談して決めます。提案された内容に納得して治療を受けるために、カウンセリングでは次の点を確認しておきましょう。
- なぜその構造・素材・治療法を選ぶのか、ほかの選択肢はあるか
- 使うメーカーと製品名(書面でもらえるか)
- 人工の歯の素材と固定方法、それぞれの費用の違い
- 骨造成などの追加処置が必要か、治療期間と通院の回数
- 保証の期間と条件、定期メンテナンスの頻度
インプラントの種類に関するよくある質問(FAQ)
まとめ
インプラントの種類は、構造(ワンピース・ツーピース)、形状と表面処理、素材(チタン・ジルコニアなど)、人工の歯の素材と固定方法、治療法(1回法・2回法、オールオン4、骨造成など)の組み合わせで決まります。メーカーを含め、どれが合うかは骨の状態や治療計画によって決まります。
治療を検討するときは、提案された種類を選ぶ理由と、メーカー名・製品名、保証やメンテナンスの体制を確認し、見積もりの総額と内訳をそろえて比べましょう。
参考文献
医療広告について
自由診療に関する詳細内容
インプラント治療は、原則として公的医療保険が適用されない自由診療のため、費用は全額自己負担です。
- 治療内容:顎の骨に人工の歯根(インプラント体)を埋め込み、骨と結合したあとに人工の歯を取り付ける。骨が足りない場合は骨造成などを行う
- 費用(税込)の目安:本数、骨造成の有無、人工の歯の素材、医院の料金体系によって異なるため、検査後の見積もりで総額を確認する
- 治療期間の目安:インプラントを埋め込んだあと、骨と結合するまで下の顎で2〜3か月程度、上の顎で4〜6か月程度おいてから人工の歯を作る(日本口腔インプラント学会「よくあるご質問」)。骨造成を行う場合はさらに長くなる。骨の状態や治り方によって個人差がある
- 主なリスク・副作用:手術後の痛み・腫れ・出血、感染、神経の損傷によるしびれ、骨との結合不全、インプラント周囲炎、人工の歯やネジの緩み・破損
- 本記事の医療情報は一般的な情報提供を目的としており、医師による診断や治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関へのご相談をおすすめします。
- 医療・健康に関する情報は変更される場合があります。実際の受診・治療については医療機関へご確認ください。


