※本記事には未承認医療機器(ジルコニア製インプラント体)に関する情報を含みます。詳細は記事下部「医療広告について」をご確認ください。
ジルコニアインプラントとは、顎の骨に埋める人工歯根(インプラント体)を、金属ではなくセラミックの一種であるジルコニアで作ったインプラントです。主流のチタン製と比べると、金属を使わず白い見た目にできる一方、割れにくさ(靱性)や長期の使用実績では、チタンに一歩譲ります。
日本口腔インプラント学会の治療指針(2024年)では、ジルコニア製のインプラント体は日本では薬事未承認とされています。医院で「ジルコニア」と説明されたときは、人工歯根まで非金属なのか、被せ物だけがジルコニアなのかを確かめるところから始めましょう。
この記事でわかること
- ジルコニアインプラントの意味と、国内での承認状況
- チタンインプラントとの違い、メリットとデメリット
- 人工の歯(上部構造)をジルコニアやセラミックにする場合との違い
- 費用を比べるときに見積もりで確認したいこと
ジルコニアインプラントとは
ジルコニアは酸化ジルコニウムを主成分とするセラミックで、白く、変色しにくい素材です。歯科では被せ物やアバットメント(人工歯根と人工の歯をつなぐ部品)の材料として広く使われ、人工歯根そのものに使う製品は、主にヨーロッパで製品化が進んでいます。
人工歯根がジルコニアか、被せ物だけがジルコニアか
「ジルコニアインプラント」という言葉は、2つの意味で使われることがあります。
| 呼び方の中身 | 人工歯根(インプラント体) | 人工の歯(上部構造) | 口の中の金属 |
|---|---|---|---|
| 人工歯根からジルコニア | ジルコニア | ジルコニアなど | 使わない設計にできる |
| 被せ物だけジルコニア | チタン・チタン合金 | ジルコニア | 人工歯根に金属が残る |
金属アレルギーへの対策として検討する場合、2つの意味合いは大きく違います。カウンセリングでは「人工歯根・アバットメント・人工の歯のそれぞれに何の素材を使うか」を聞くと、説明の食い違いを防げます。
国内の承認状況
日本口腔インプラント学会の「口腔インプラント治療指針2024」は、埋入用のジルコニアインプラントについて、日本では薬事未承認のため使用が難しく、ヨーロッパを中心に製品化・臨床応用が進んでいるとの記載があります。一般的なインプラント材料として同学会が挙げているのは、チタンとチタン合金です。
国内でジルコニア製のインプラント体を使う場合は、承認を受けていない医療機器を歯科医師の判断で用いることになります。使う製品の名前、入手経路、海外での承認や安全性の情報、破折や脱落が起きたときの保証について、治療前に説明を受けてください。未承認医療機器に関する表示は、記事下部の「医療広告について」にまとめています。
参考:公益社団法人日本口腔インプラント学会「口腔インプラント治療指針2024」
チタンインプラントとの違い
ジルコニアとチタンの違いは、金属かどうか、見た目、割れにくさ、使用実績と国内承認の4点に集約されます。どちらが一律に優れているわけではなく、金属アレルギーの有無、治療する部位、噛む力の強さ、骨の状態によって向き不向きが分かれます。
| 比較項目 | ジルコニア製インプラント体 | チタン製インプラント体 |
|---|---|---|
| 素材 | セラミック(非金属) | 金属(チタン・チタン合金) |
| 見た目 | 白く、歯ぐきが薄い部位でも色が透けにくい | 歯ぐきが薄い・下がった部位では金属色が見えることがある |
| 割れにくさ | 硬いが、破壊靱性値はチタンに劣る | 靱性が大きく、割れにくい |
| 使用実績 | 比較的新しく、製品や扱う医院が限られる | インプラント材料の主流で、実績が多い |
| 国内承認 | 学会の治療指針(2024年)では薬事未承認 | 国内で販売されている製品が多い |
日本歯科医師会は、インプラント体の材質をチタンまたはチタン合金とし、国内では20数種類のインプラントが販売されていると紹介しています。
参考:公益社団法人日本歯科医師会「テーマパーク8020 インプラント」

ジルコニアインプラントのメリット
主なメリットは、金属を使わない設計にできることと、白い見た目です。
金属を使わない設計にできる
人工歯根からジルコニアで作れば、口の中に金属を入れずに治療を組み立てられます。検査で金属アレルギーが分かっている方や、口の中に金属を入れることに抵抗がある方は、選択肢の一つとして検討できます。
ただし、金属アレルギーの原因となる金属は人によって違います。治療指針によると、金属アレルギーが疑われる場合は、インプラント治療を始める前にパッチテストなどの検査が必要です。チタンで問題が出るかどうかも含め、検査結果をもとに素材を選ぶのが順序です。
歯ぐきから色が透けにくい
素材が白いため、歯ぐきが薄い部位や、将来歯ぐきが下がった場合にも、根元が黒っぽく見えにくくなります。治療指針でもアバットメントの素材について、見た目が重視される部位では金属よりジルコニアのほうが審美的なリスクを減らせると位置づけています。
前歯の見た目を重視したい方に向く特徴ですが、仕上がりは隣の歯の色や歯ぐきの状態にも左右されます。
ジルコニアインプラントのデメリットと注意点
デメリットは、割れる可能性があること、国内未承認で実績が限られること、費用が高く扱う医院が少ないことの3つです。
強い力で割れる可能性がある
ジルコニアは硬い素材ですが、チタンのようにしなって力を逃がす性質は弱く、治療指針にも、破壊靱性値はチタンに劣るとあります。すべてジルコニアで作ったアバットメントは、人工歯根との接合部で割れるリスクがあるとも記載されています。
歯ぎしりや食いしばり(ブラキシズム)は、素材にかかわらず、インプラント体や人工の歯が壊れる原因になります。奥歯のように強い力がかかる部位や、歯ぎしりを指摘されたことがある方は、ジルコニアを選ぶ前に歯科医師とよく話し合ってください。
国内未承認で、長期の実績が限られる
ジルコニア製のインプラント体は、国内では承認を受けた製品を使えず、海外の製品を用いることになります。チタンに比べて長期の経過を追ったデータは少なく、万一割れたり外れたりしたときの再治療や保証の扱いは、製品と医院の方針によって異なります。
費用が高くなりやすく、扱う医院が少ない
海外から製品を取り寄せる手間があり、扱う医院も限られるため、チタン製より費用が高くなることがあります。近くの医院ではチタンしか扱っておらず、遠方まで通うことになるケースもあるでしょう。費用・通院の距離・保証をあわせて比べることが欠かせません。
人工の歯(上部構造)のジルコニア・セラミックとの違い
「インプラントをジルコニアにする」と言われた場合、人工歯根ではなく、上に付ける人工の歯(上部構造)の素材を指していることもあります。人工歯根はチタンのまま、見た目と強度に優れたジルコニアの人工歯を組み合わせる方法は、国内で広く行われています。
人工の歯の素材の選び方
治療指針では、上部構造の材料として金属、ジルコニア、二ケイ酸リチウム(ガラスセラミックの一種)などを挙げ、治療する部位、噛み合わせ、歯ぎしりの有無、見た目の希望、清掃状態などを考えて選ぶとしています。
| 素材 | 特徴 | 注意したい点 |
|---|---|---|
| ジルコニア | 白く、強度が非常に高い | 研磨が不十分だと、噛み合う歯をすり減らすことがある |
| 二ケイ酸リチウムなどのセラミック | 透明感があり、天然歯の色に近づけやすい | 部位や噛む力に合うかを確認する |
| 金属 | 割れにくい | 金属色が見える。金属アレルギーでは避けたい場合がある |
一方で治療指針は、十分に研磨したジルコニアは摩擦が小さいという報告も紹介しています。前歯か奥歯か、噛む力の強さによって向く素材が変わるため、一律に「前歯はセラミック、奥歯はジルコニア」と決まるわけではありません。
金属アレルギーが心配なときのチタン+ジルコニアの組み合わせ
アバットメントでは、チタンの土台にジルコニアを接着したものが選ばれることが多いと治療指針にあります。人工歯根まで非金属にこだわらなければ、実績の多いチタンの人工歯根に、ジルコニアのアバットメントや人工の歯を組み合わせて、見た目を整える方法も検討できます。チタンで金属アレルギーが出るかどうかは、事前の検査で確かめましょう。
費用の考え方と見積もりの確認点
ジルコニアインプラントに、公的な費用の相場はありません。インプラント治療は通常は健康保険が使えない自由診療で、日本口腔インプラント学会は、検査・手術・人工の歯を含めて治療が終わるまでの費用をしっかり確認してから受けるよう呼びかけています。
同学会は、インプラントの費用を「診査・診断」「インプラント手術」「骨量が足りない場合の付随手術」「手術関連処置」「上部構造」「メンテナンス」の6項目に分けて示しています。上部構造は、使う材料やパーツによって料金が変わります。医院ごとに料金の含まれ方が違うため、次の点を見積もりで確認すると比べやすくなります。
| 確認する項目 | 見ておきたい点 |
|---|---|
| 使う製品 | 人工歯根・アバットメント・人工の歯の素材と製品名、承認の有無 |
| 含まれる費用 | 検査(CTなど)、手術、アバットメント、人工の歯、仮歯 |
| 別料金になりやすい費用 | 骨を増やす処置(骨造成)、定期メンテナンス |
| 税込の総額 | 1本あたりの金額だけでなく、治療が終わるまでの総額 |
| 保証 | 割れた・外れたときの再治療の扱いと期間 |
参考:公益社団法人日本口腔インプラント学会「よくあるご質問」/公益社団法人日本口腔インプラント学会「インプラントの費用は?」
向いている人・慎重に検討したい人
ジルコニアインプラントが候補になるのは、検査で金属アレルギーが確認された方や、前歯など見た目が気になる部位を治療する方です。反対に、歯ぎしり・食いしばりが強い方、強い力がかかる奥歯の治療、骨の量が少なく骨造成が必要な方は、チタンを含めて比べたほうがよいでしょう。
医院を選ぶときは、次の3点が目安になります。
- 素材と製品:どの部分にどの製品を使い、国内承認の有無と入手経路を説明してくれるか
- リスクと代替案:割れる可能性や実績の少なさ、チタンという代わりの方法も話してくれるか
- 保証とメンテナンス:再治療の条件と、治療後の定期的な通院の予定が示されているか
白さや「金属を使わない」ことだけが強調され、ほかの説明が少ない場合は、別の医院で意見を聞くのも一つの方法です。
ジルコニアインプラントに関するよくある質問
まとめ
ジルコニアインプラントは、人工歯根を非金属のジルコニアで作るインプラントです。白い見た目と金属を使わない点が特徴ですが、学会の治療指針(2024年)では国内で薬事未承認とされ、割れにくさや実績ではチタンに及びません。
検討するときは、どの部分がジルコニアなのか、製品と承認の状況、保証、チタンを使う代わりの方法まで説明を受け、見積もりの総額で比べてから決めてください。
医療広告について
未承認医療機器に関する表示
未承認である旨:ジルコニア製のインプラント体(人工歯根)は、医薬品医療機器等法上の承認を受けていない未承認医療機器です(出典:公益社団法人日本口腔インプラント学会「口腔インプラント治療指針2024」)。
入手経路:国内では、歯科医師が海外の製品を個人輸入して用いる場合があります。個人輸入に関する注意は、厚生労働省「あやしいヤクブツ連絡ネット」をご確認ください。使用する製品と入手経路は、治療を受ける医療機関で確認してください。
国内の承認品の有無:ジルコニア製で国内の承認を受けたインプラント体はありません。チタン・チタン合金製のインプラント体は、国内で承認を受けた製品が販売されています。
諸外国における安全性等の情報:ヨーロッパを中心に製品化され、臨床応用が進んでいます(出典:同指針)。海外での承認状況や重大な副作用などの情報は製品ごとに異なるため、使用する製品について歯科医師から説明を受けてください。情報が十分でない場合は、重大なリスクが明らかになっていない可能性があります。
未承認医療機器であるため、万一重篤な健康被害が生じた場合も医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。
自由診療に関する詳細内容
インプラント治療は、原則として公的医療保険が適用されない自由診療のため、費用は全額自己負担です。
- 治療内容:顎の骨に人工歯根(インプラント体)を埋め込み、骨と結合したあとに人工の歯を取り付ける。ジルコニア製のインプラント体は国内未承認の医療機器を用いる
- 費用(税込)の目安:使う製品、本数、骨造成の有無、人工の歯の素材、医院の料金体系によって異なるため、検査後の見積もりで総額を確認する
- 治療期間の目安:インプラント治療全般では、埋め込んだあと骨と結合するまで下の顎で2〜3か月程度、上の顎で4〜6か月程度おいてから人工の歯を作る(日本口腔インプラント学会「よくあるご質問」)。骨造成を行う場合はさらに長くなり、骨の状態や治り方によって個人差がある
- 主なリスク・副作用:手術後の痛み・腫れ・出血、感染、神経の損傷によるしびれ、骨との結合不全、インプラント周囲炎、インプラント体や人工の歯の破折・脱落
- 本記事の医療情報は一般的な情報提供を目的としており、医師による診断や治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関へのご相談をおすすめします。
- 医療・健康に関する情報は変更される場合があります。実際の受診・治療については医療機関へご確認ください。


