抜歯してからインプラントを入れる時期には、抜歯と同じ日に埋め込む「即時埋入」、歯ぐきが治ってから埋め込む「早期埋入」、抜いた穴の治りを待って埋め込む「待時埋入」の3つに分かれます。どれになるかは、抜く歯の周りの感染や炎症、骨の量、埋め込んだインプラントがしっかり固定されるか(初期固定)などを検査して、歯科医師が判断します。
抜歯からインプラントまでの期間の目安、抜歯と同時に入れられる条件と見送られる理由、人工の歯が入るまでの流れ、費用の考え方、抜歯の前に歯科医師へ確認したいことを整理しました。
この記事でわかること
- 抜歯からインプラントを入れるまでの期間の目安(即時・早期・待時埋入の違い)
- 抜歯と同時にインプラントを入れられる条件と、見送られる主な理由
- 抜歯から人工の歯が入るまでの流れと、骨が足りない場合の処置
- 費用の考え方と、抜歯の前に歯科医師へ確認しておきたいこと
抜歯からインプラントまでの期間の目安|即時・早期・待時埋入の違い
埋め込む時期によって、同じ日から数か月後まで幅が出ます。日本口腔インプラント学会の治療指針による埋入時期の分け方は、次の3つです。
| 埋入の時期 | 抜歯から埋め込むまで | 主に検討される状態 |
|---|---|---|
| 即時埋入 | 抜歯と同じ日 | 抜く歯と周りに感染や炎症がなく、骨が十分に残り、しっかり固定できる見込みがある |
| 早期埋入 | 抜いた穴の周りの歯ぐきが治った段階、または穴に骨が一部できた段階 | 感染や炎症がない、またはあっても軽い |
| 待時埋入(通常埋入) | 抜いた穴が治ってから。そのまま治りを待つ場合は約4〜6か月後 | 感染がある、骨が足りないなど、治りを待ってから進めたほうがよい |
日本歯科医師会の説明では、早期埋入で周りの粘膜が治るのを待つ期間は1〜2カ月くらいです。待時埋入でも、抜いた穴が完全に骨に置き換わるまでには6か月以上かかるとされ、抜歯のときに骨の形を保つ処置(ソケットプリザベーション)や骨を増やす処置を組み合わせるかどうかも、このとき検討されます。
埋め込んだあと、人工の歯が入るまでの期間
インプラントを埋め込んだあとは、骨と結合するのを待ってから人工の歯を作ります。日本口腔インプラント学会の説明では、下の顎で2〜3か月程度、上の顎で4〜6か月程度おいてから型を採ります。上の顎は骨がやわらかいことが多く、下の顎より長めになりがちです。
抜歯から人工の歯が入るまでの期間は、「抜歯から埋め込むまで」と「埋め込んでから骨と結合するまで」を合わせたものです。骨を増やす処置が加わると、その分さらに延びます。自分の場合の見通しは、検査後の治療計画で確認してください。
参考:公益社団法人日本口腔インプラント学会『口腔インプラント治療指針2024』
参考:公益社団法人日本口腔インプラント学会「よくあるご質問」
抜歯と同時にインプラントを入れられる条件(抜歯即時埋入)
誰でも選べる方法ではなく、歯や骨の状態に条件があります。治療指針は、抜く歯とその周りに感染や炎症がない、歯の外側(唇側)の骨が残っている、大きな骨の欠損がない、埋め込んだ直後に十分な固定が期待できる、といった状態が、治療指針の示す適応の目安です。
日本歯科医師会の紹介では、抜歯即時埋入には手術の回数が減る、治療期間が短くなる、抜いた部分の骨や歯ぐきがやせるのを避けられるといった利点があるとされますが、どの程度得られるかには個人差があります。一方で治療指針は、抜いた穴の形が時間とともにどう変わるかは予測が難しく、インプラントの太さや長さに十分な配慮が必要だとしています。
抜歯と同時に入れられない主な理由
次のような場合は、抜歯と同時の埋め込みは見送られ、治りを待つ早期埋入・待時埋入や、骨を増やす処置が検討されます。
- 歯の根の先や周りに膿・炎症がある(根の先の病気や、進んだ歯周病など)
- 歯を支える骨が大きく失われている、歯の外側の骨が薄い
- 埋め込んでもインプラントがしっかり固定されない
- 持病や喫煙など、傷の治りに影響する要因がある
抜歯前のCT検査で即時埋入を予定していても、抜いたあとの穴や骨の状態を見て、その場で待つ方針に切り替わることがあります。その場合の期間や費用の変わり方も、事前に聞いておくと当日の判断に迷いにくくなります。
埋め込んだ日に仮の歯まで付ける方法
前歯などでは、埋め込んだ日に仮の歯を付ける方法(即時荷重)もあります。日本歯科医師会によると、骨の量が十分にあって硬く、インプラントが十分に固定できたときに行われる方法です。
治療指針が示すエビデンスの分類では、即時埋入と即時荷重を組み合わせる方法の多くが「臨床的に検証が不十分」とされています。希望する場合は、自分に適用できる理由とリスクを説明してもらいましょう。
抜歯からインプラントまでの流れ
抜歯を伴うインプラント治療は、おおむね次の順で進みます。即時埋入では3と5を同じ日に行います。
- 検査・診断:エックス線撮影やCTで骨の量や形、歯の根や歯ぐきの状態を確認し、その歯を残せないか、抜いたあとどう補うかを決める
- 事前の治療:歯周病や虫歯があれば先に治療する。持病がある場合は内科などの主治医と連携することがある
- 抜歯
- 治りを待つ期間(早期・待時埋入の場合)。必要に応じて骨を増やす処置を行う
- インプラントを埋め込む手術
- 骨と結合するまで待つ期間
- 型を採り、人工の歯(上部構造)を取り付ける
- 定期的なメンテナンス
歯周病にかかったことがある人は治療後にトラブルが起きやすく、喫煙する人は治療後のインプラントの残存率が低いことが知られています。そのため日本口腔インプラント学会は、歯周病の治療を先に行い、減煙や禁煙をしてから治療を受けるよう勧めています。糖尿病や骨粗鬆症などの持病、服用中の薬がある場合も、治療の進め方に関わるため事前に伝えましょう。
骨が足りない場合は、骨を増やす処置を行う
インプラントを支える骨が足りない場合は、骨移植、骨再生誘導法(GBR法)、上顎洞底挙上術(サイナスリフト)などで骨を増やすことがあります。日本歯科医師会によると、骨を増やした場合は移植した骨が定着するまで4〜6カ月かかり、その分治療期間が延び、費用も上乗せされます。
待つ間の歯がない期間
早期・待時埋入では、抜歯から人工の歯が入るまで歯がない期間ができます。見た目や噛み合わせが気になる場合は、仮歯や仮の入れ歯で補える場合もあります。仮の歯で強く噛むと傷口やインプラントに負担がかかる場合もあるため、使い方は歯科医院の指示に従ってください。
参考:厚生労働省委託事業「歯科インプラント治療のためのQ&A」
抜歯後にインプラントをせず放置した場合
日本歯科医師会によると、抜歯後に放置したために顎の骨が吸収し、インプラントを埋め込むのに必要な骨が足りなくなることもあります。歯のない部分に隣の歯が傾いたり、噛み合う歯が伸びてきたりして、噛み合わせが変わることもあります。
インプラントにするか決めかねている場合も、抜いたあとの補い方を早めに相談しておくと、選べる方法を把握しやすくなります。
抜歯とインプラント手術の痛み・腫れ
抜歯もインプラントの手術も、通常は局所麻酔をして行います。麻酔が切れたあとは痛み・腫れ・出血・内出血が出ることがあり、程度は処置の範囲や骨を増やす処置の有無によって異なります。抜歯とインプラント手術のどちらが痛いかは処置の内容によるため、一概には言えません。
手術後の過ごし方は処置の内容で変わるため、処方された薬の飲み方、うがい・歯みがき、食事、飲酒・喫煙について、帰宅前に確認しておきましょう。痛みや腫れが日を追って強くなる、出血が止まらない、しびれが続くといった場合は、治療を受けた歯科医院へ連絡してください。
費用の考え方|抜歯とインプラントは別々に費用がかかる
通常のインプラント治療には健康保険が適用されず、全額自己負担の自費診療です。健康保険が適用されるのは、外傷や腫瘍などの病気で顎の骨を失った場合や、生まれつき歯や顎の骨が欠損している場合などに限られます。
インプラントの費用は医療機関によって異なり、抜歯、検査、インプラント体、土台(アバットメント)、人工の歯、骨を増やす処置、メンテナンスなどが別々にかかる場合があります。抜歯の費用がインプラントの費用に含まれるか、別に請求されるかも医療機関によって違うため、見積もりで総額に何が含まれるかを確認しましょう。
抜歯が必要になるケースと、抜歯の前に確認したいこと
インプラント治療で抜歯が検討されるのは、重い虫歯や進んだ歯周病、歯の根が割れた(歯根破折)などで、その歯を残すのが難しいと判断された場合です。すでに歯がない部分に入れる場合は、抜歯は必要ありません。抜いたあとの補い方にはインプラントのほか、ブリッジや入れ歯もあり、残っている歯や骨の状態、費用、希望によって向く方法が変わります。
抜歯は元に戻せない処置です。抜歯とインプラントを勧められたら、次の点を説明してもらうと、判断の材料がそろいます。
- その歯を残す治療はできないか、抜歯が必要な理由
- 抜いたあとの補い方(インプラント・ブリッジ・入れ歯)と、それぞれの利点・欠点
- 即時・早期・待時のどれで進めるか、その理由
- 即時埋入を予定する場合、抜歯後の状態で待つ方針に変わる可能性と、その場合の期間・費用
- 骨を増やす処置が必要か
- 歯がない期間を仮歯や仮の入れ歯で補えるか
- 総額に含まれるもの(検査・抜歯・人工の歯・保証・メンテナンス)
説明を聞いても迷う場合は、別の歯科医師に意見を聞く(セカンドオピニオン)ことも選択肢の一つです。
インプラントと抜歯に関するよくある質問
まとめ
抜歯からインプラントを入れる時期には、抜歯と同じ日の即時埋入、歯ぐきが治ってからの早期埋入、治りを待つ待時埋入があり、感染や炎症、骨の量、初期固定の見込みで決まります。人工の歯が入るまでには、埋め込んでから骨と結合するまでの期間も加わり、骨を増やす処置があればさらに延びます。
抜歯とインプラントを勧められたら、抜歯が必要な理由、埋め込む時期とその理由、骨を増やす処置の要否、総額に含まれるものを確認し、納得したうえで治療計画を決めましょう。
参考文献
- 公益社団法人日本口腔インプラント学会『口腔インプラント治療指針2024』
- 公益社団法人日本口腔インプラント学会「よくあるご質問」
- 日本歯科医師会 テーマパーク8020「インプラント」
- 日本歯科医師会 お口のなんでも相談「インプラント」
- 厚生労働省委託事業「歯科インプラント治療のためのQ&A」
医療広告について
自由診療に関する詳細内容
インプラント治療は、原則として公的医療保険が適用されない自由診療のため、費用は全額自己負担です。
- 治療内容:抜歯と同時、または抜歯後に治りを待ってから、顎の骨に人工の歯根(インプラント体)を埋め込み、骨と結合したあとに人工の歯を取り付ける。骨が足りない場合は骨を増やす処置を行う
- 費用(税込)の目安:本数、骨を増やす処置の有無、人工の歯の素材、医院の料金体系によって異なるため、検査後の見積もりで総額を確認する
- 治療期間の目安:抜歯から埋め込むまでは即時埋入で同日、そのまま治りを待つ待時埋入で約4〜6か月後。埋め込んだあと、骨と結合するまで下の顎で2〜3か月程度、上の顎で4〜6か月程度。骨を増やす処置を行う場合はさらに長くなる
- 主なリスク・副作用:手術後の痛み・腫れ・出血・内出血、感染、神経の損傷によるしびれ・麻痺、上顎洞炎、骨との結合不全、インプラント周囲炎。即時埋入では、十分な固定が得られず当日の埋め込みを見送る場合がある
- 本記事の医療情報は一般的な情報提供を目的としており、医師による診断や治療に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関へのご相談をおすすめします。
- 医療・健康に関する情報は変更される場合があります。実際の受診・治療については医療機関へご確認ください。


