市販のマウスピース矯正はできる?歯科医院との違いと危険性

市販のマウスピース矯正と歯科医院の矯正の違いを示す記事アイキャッチ

市販のマウスピースの多くは、歯ぎしり・食いしばり対策やスポーツ時の保護などを目的とした製品であり、歯並びを計画的に動かす矯正装置ではありません。見た目が似ていても、歯科医院のマウスピース矯正とは目的・設計・管理方法が異なります。

一般的な市販の保護用マウスピースを歯並びの改善目的で自己判断により使うと、歯や歯ぐきへの圧迫感、粘膜の傷、噛みにくさなどが生じる場合があります。歯並びを整えたい場合は、市販品を購入する前に歯科医師の診察を受け、虫歯や歯周病、歯根、顎の骨、噛み合わせを確認してもらいましょう。

この記事でわかること

・市販のマウスピースで歯列矯正ができるのか

・市販品と歯科医院のマウスピース矯正の違い

・自己判断で使うリスクと相談すべきサイン

・購入前に表示で確認したい項目

目次

市販のマウスピースで歯列矯正はできる?

ドラッグストアや通販で単品販売されている、歯ぎしり対策用・スポーツ用などの一般的なマウスピースは、歯を計画的に動かす矯正装置ではありません。自己判断で歯並びの改善目的に使用しないでください

いびきや睡眠時無呼吸への対応を目的とする口腔内装置は、顎関節や歯周病の確認、歯型と噛み合わせの採取、装着後の経過確認を伴う医療として用いられる場合があります。いびき対策を目的とする場合も、市販品で自己判断せず医療機関へ相談してください。

矯正歯科治療では、歯だけでなく歯根や顎の骨、噛み合わせを調べ、歯科医師が移動量や順序を計画します。日本矯正歯科学会も、マウスピース型矯正装置による治療には、歯科医師による適切な診察・検査・分析・診断と治療経過の確認が必要だとする見解を示しています。

市販品の商品名や広告に「歯並び」「フィット」「口元ケア」などの言葉があっても、歯列矯正の効果を意味するとは限りません。用途と使用上の注意を確認し、歯を動かす目的では使用しないでください。

参考:マウスピース型矯正装置による治療に関する見解|日本矯正歯科学会()

市販品と歯科医院のマウスピース矯正の違い

大きな違いは、歯を動かすための診断と治療計画があるか、治療中に経過を確認する歯科医師がいるかという点です。透明な樹脂製で見た目が似ていても、目的と使い方は同じではありません。

比較項目:一般的な市販品:歯科医院のマウスピース矯正

主な目的:歯ぎしり対策、スポーツ時の外傷予防など:診断に基づいて歯を段階的に動かし、歯並びや噛み合わせの改善を目指す

設計:既製サイズまたは自分で加熱成形する製品が中心:口腔内の検査結果と治療計画に合わせて個別に作製する

事前確認:購入者が用途や適合を判断する:虫歯、歯周病、歯根、顎の骨、噛み合わせなどを確認する

使用中の管理:原則として購入者自身が管理する:歯科医師が歯の動きや口腔内の状態を定期的に確認する

合わない場合:使用を中止し、必要に応じて歯科医院へ相談する:診察のうえで装置や治療計画を調整する場合がある

歯科医院のマウスピース矯正でも、すべての歯並びに適しているわけではありません。症例によってはワイヤー矯正との併用や別の治療方法が検討されます。

市販のマウスピースを歯並び目的で使うリスク

歯並びや噛み合わせに合わない市販品を長時間使うと、意図しない力が歯や歯ぐきにかかるおそれがあります。違和感を我慢して使い続けず、痛みや噛み合わせの変化があれば使用を中止して歯科医院へ相談してください。

歯や歯ぐきが傷む

既製品の縁や、成形が不十分な部分が歯ぐきや頬の粘膜に当たり、痛みや傷の原因になる場合があります。強く圧迫される、出血する、歯がしみるなどの症状も相談の目安です。

噛み合わせが変化する

歯列に合わない装置を装着すると、歯や歯ぐきへの圧迫感、粘膜の傷、噛みにくさなどが生じる場合があります。装置を外した後も痛みや噛み合わせの違和感が続く場合は、使用を中止して歯科医院へ相談してください。

虫歯や歯周病の発見が遅れる

矯正治療の前には虫歯や歯周病などの確認が必要です。診察を受けずに装置を使うと、もともとあった病気に気づかないまま使用を続けてしまう可能性があります。

必要な治療の開始が遅れる

歯並びの変化には、矯正後の後戻り、歯周病、欠損歯、顎の成長など複数の要因が関係します。市販品で様子を見続けることで、原因に合った診断や治療が遅れる場合があります。

参考:お口のなんでも相談「矯正」|日本歯科医師会

通販のセルフ矯正と市販の保護用マウスピースも区別する

通販で扱われる製品には、店頭で購入する歯ぎしり対策用のマウスピースだけでなく、自宅で歯型を採る装置や、マウスピースを配送するサービスもあります。サービスの仕組みは一律ではないため、「通販だから同じ」とまとめず、歯科医師がどの段階で関与するかを確認する必要があります。

日本矯正歯科学会は、矯正歯科医による適切な診察、検査、分析、診断、治療経過の確認を十分に行わず、装置を患者へ直接配送する形の治療について、予期しない問題が起こる可能性を指摘しています。オンライン相談があっても、必要な対面診察やエックス線撮影などが省略されていないか確認しましょう。

確認したい項目は、担当歯科医師の氏名と診療場所、治療前の検査、通院頻度、緊急時の連絡先、追加装置の費用、中断・転院・返金条件です。説明が不十分なまま契約を急がせるサービスは避け、別の歯科医院で意見を聞くことも検討してください。

参考:カスタムメイドのアライナー型矯正装置に対する本会の見解|日本臨床矯正歯科医会

歯ぎしり・スポーツ用の市販品を本来の用途で購入する場合の確認項目

以下は、歯並びを動かす目的で購入するためのチェック項目ではありません。歯ぎしりやスポーツ時の保護など、製品本来の用途で市販品を検討する場合も、パッケージや販売ページの表示を確認しましょう。

・使用目的と対象年齢

・歯列矯正を目的とする製品かどうか

・装着時間、成形方法、交換時期

・使用できない人や使用を中止すべき症状

・素材、製造販売元、問い合わせ先

使用対象年齢や、矯正装置・入れ歯を使用している人への注意事項は製品ごとに異なります。パッケージと説明書を確認し、対象外に該当する場合は使用しないでください。

歯ぎしりや食いしばりが気になる場合も、原因や口腔内の状態によって対応は異なります。市販品が自分に適しているか判断できないときは、購入前に歯科医師へ相談してください。

参考:OZマウスガード 添付文書|医薬品医療機器総合機構(PMDA)

歯科医院へ相談したほうがよいサイン

歯並びを動かしたい場合は、症状の有無にかかわらず歯科医院での診断が必要です。市販品の使用中または使用後に次の変化がある場合も、使用を中止して相談しましょう。

・歯、歯ぐき、顎に痛みや腫れがある

・装着前より噛みにくくなった

・歯が動く、しみる、出血する

・口内炎や傷が繰り返しできる

・矯正治療後の後戻りが気になる

・子どもの歯並びや顎の成長が気になる

矯正相談では、どの部分が気になるか、市販品を使った期間、痛みや違和感が始まった時期を伝えると確認が進みやすくなります。使用した製品のパッケージや説明書が残っていれば持参してください。

よくある質問

Q. 市販のマウスピースで歯並びを整えられますか?

一般的な市販品は歯を計画的に動かす矯正装置ではないため、歯並びの改善目的では使用しないでください。歯列矯正を希望する場合は、歯科医師の診察と検査を受けましょう。

Q. お湯で成形するマウスピースなら歯に合いますか?

お湯で成形できても、歯科医師が噛み合わせや歯周組織を確認して個別設計した装置と同じではありません。また、製品によっては年齢や矯正治療中の使用に制限があります。説明書の対象者・禁忌を確認し、強い圧迫、痛み、噛みにくさがある場合は使用を中止してください。

Q. 市販品とリテーナーは同じですか?

同じではありません。リテーナーは矯正治療後の歯の位置を保つため、治療を担当した歯科医師の指示に基づいて使用する保定装置です。紛失や破損、後戻りが気になる場合は、市販品で代用せず担当医院へ連絡してください。

Q. 通院しないマウスピース矯正なら安全ですか?

通院回数だけで安全性は判断できません。治療前の対面診察や検査、担当歯科医師、経過確認の方法、トラブル時の対応を確認し、不明点が残る場合は契約前に別の歯科医師へ相談しましょう。

Q. 子どもに市販の矯正用マウスピースを使わせてもよいですか?

子どもの歯並びや噛み合わせは成長とともに変化します。自己判断で装置を使わせず、小児歯科または矯正歯科で成長段階と治療の必要性を確認してください。

まとめ

市販のマウスピースの多くは、歯ぎしり対策や外傷予防などを目的とした製品で、歯列矯正用の装置とは目的も管理方法も異なります。歯並びを整えるには、歯科医師による診察・検査・診断と、経過に応じた管理が必要です。

市販品の使用で痛みや噛み合わせの変化がある場合は使用を中止してください。歯並びを改善したい方は、製品を自己判断で試す前に歯科医院で相談し、自分に適した治療方法と見積もり、通院条件を確認しましょう。

参考文献

・日本矯正歯科学会「マウスピース型矯正装置による治療に関する見解」(https://www.jos.gr.jp/4348)

・日本臨床矯正歯科医会「カスタムメイドのアライナー型矯正装置に対する本会の見解」(https://www.jpao.jp/orthodontic_dentistry/idea/view_on_aligners.html)

・日本歯科医師会「お口のなんでも相談『矯正』」(https://www.jda.or.jp/consultation/vol-21.html)

・日本歯科医師会「睡眠時無呼吸症候群」(https://www.jda.or.jp/park/trouble/index15_02.html)

・日本歯科医師会「スポーツと歯科」(https://www.jda.or.jp/park/relation/sport.html)

・医薬品医療機器総合機構「OZマウスガード 添付文書」(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/kikiDetail/ResultDataSetPDF/730410_13B1X10089001120_A_01_01)

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この記事を書いた人

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