歯科矯正は原則として健康保険が適用されない自由診療です。ただし、厚生労働大臣が定める疾患に起因する噛み合わせの異常や、所定の手術を伴う顎変形症など、一定の条件を満たす場合は保険診療の対象になります。
保険診療の対象となる疾患・処置・手術の要件に該当しない一般的な歯列矯正は、見た目だけでなく噛み合わせの改善を目的とする場合でも、原則として自由診療です。装置の種類だけで保険適用の可否が決まるわけではありません。
- この記事でわかること
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- 歯科矯正が保険適用になる3つの主なケース
- 保険適用を受けられる医療機関の探し方
- 窓口負担、高額療養費、医療費控除の違い
- 相談から治療開始までの確認手順
矯正治療の種類や一般的な流れを先に確認したい方は、次の記事も参考にしてください。
関連記事:歯科矯正とは?種類や費用、期間を解説
歯科矯正は原則として保険適用外
指定疾患や手術要件などに該当しない一般的な叢生(歯が重なって生える状態)、上顎前突(出っ歯)、反対咬合(受け口)などの矯正は、原則として自由診療です。噛みにくさがあっても、それだけで自動的に保険適用になるわけではありません。
保険診療の対象となる疾患・処置・手術の要件に該当しない一般的な矯正治療は、見た目だけでなく噛み合わせの改善を目的とする場合でも、原則として自由診療です。ワイヤー矯正かマウスピース矯正かという装置の違いだけで、保険適用が決まるわけではありません。
参考:公益社団法人 日本矯正歯科学会「矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは」
歯科矯正が保険適用になる主なケース
日本矯正歯科学会は、保険診療の対象になる主なケースを3つに整理しています。対象疾患や制度は改定されることがあるため、最終的な適用可否は届出医療機関で確認してください。
| 区分 | 主な条件 | 受診先の目印 |
|---|---|---|
| 国が定める疾患 | 厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常であること | 「矯診」の届出医療機関 |
| 永久歯の萌出不全 | 前歯・小臼歯の永久歯のうち3歯以上が生えず、埋伏歯開窓術を必要とする咬合異常であること | 「矯診」の届出医療機関 |
| 顎変形症 | 顎離断等の手術を必要とし、手術前・手術後に矯正歯科治療を行うこと | 「顎診」の届出医療機関 |
厚生労働大臣が定める疾患に起因する咬合異常
唇顎口蓋裂、ダウン症候群、6歯以上の先天性部分無歯症など、国が定める疾患に起因した咬合異常は、条件を満たすと保険診療の対象になります。疾患があるだけで一律に適用されるのではなく、その疾患が噛み合わせの異常に関係していることなどを診断で確認します。
令和8年度診療報酬改定では、原発性低リン血症性くる病、ロイス・ディーツ症候群、18歳未満で連続した3歯以上の先天性欠如歯に起因する咬合異常など、対象の追加が示されました。対象疾患や算定条件は改定されることがあります。最新の対象疾患と適用条件は、厚生労働省の告示・通知または届出医療機関で確認してください。
永久歯3歯以上の萌出不全に起因する咬合異常
前歯と小臼歯の永久歯のうち3歯以上が生えないことで噛み合わせに異常が生じ、埋伏歯開窓術(歯ぐきを開いて埋まった歯を出す手術)を必要とする場合が対象です。単に永久歯が生えるのが遅い場合や、手術を必要としない場合まで一律に対象になるわけではありません。
手術を必要とする顎変形症
上下の顎の大きさや位置に著しいずれがあり、顎離断等の外科手術を必要とする顎変形症では、手術前と手術後の矯正歯科治療が保険適用になります。手術を伴わず、矯正装置だけで治療する場合は、この区分の対象ではありません。
マウスピース矯正や一般的な不正咬合は保険適用になる?
一般的な出っ歯、受け口、叢生、開咬などを治す矯正は、通常は自由診療です。症状が重いと感じても、国が定める疾患や手術要件などに該当しなければ、保険診療にはなりません。
また、保険適用になる症例と、保険診療で使用できる装置は別の問題です。対象症例であっても、希望するマウスピース型矯正装置や目立ちにくい装置を保険診療で選べるとは限りません。治療方法と追加費用の有無は、診断後の治療計画書や説明書で確認してください。
保険適用を受けられる医療機関の探し方
保険適用の矯正治療は、施設基準を満たし、地方厚生(支)局長へ届け出た保険医療機関で受ける必要があります。「矯正を扱っている」「日本矯正歯科学会の認定医がいる」という情報だけでは、保険診療に対応できるとは限りません。
- 厚生労働省の地方厚生局一覧から、お住まいの地域を管轄する厚生(支)局を開く
- 「施設基準届出受理医療機関名簿」を検索する
- 都道府県別の歯科の名簿を開く
- 疾患・萌出不全は「矯診」、顎変形症は「顎診」の届出がある医療機関を確認する
受診前には、対象となる病気や状態の診断に対応しているか、手術が必要な場合の連携医療機関はどこかも問い合わせておくとよいでしょう。

相談から保険診療を始めるまでの流れ
通常の保険診療では、患者自身がエックス線写真や口腔内写真を保険者へ提出し、事前承認を得る一律の申請手続きはありません。届出医療機関で診察・検査・診断を受け、条件に該当すると判断された場合に保険診療として治療計画が立てられます。

- 「矯診」または「顎診」の届出医療機関へ相談する
- 診察、エックス線撮影、口腔内写真など必要な検査を受ける
- 対象疾患、処置・手術要件、施設要件を満たすか診断を受ける
- 治療方法、連携先、期間、見込まれる自己負担について説明を受ける
- 内容に同意したうえで保険診療を開始する
育成医療(自立支援医療)や自治体独自の助成を併用する場合は、別途、事前申請が必要になることがあります。利用したい制度がある場合は、治療開始前に医療機関と自治体の窓口へ確認してください。
学校歯科健診後の相談
学校歯科健診で咬合異常などを指摘された子どもについては、2024年度の診療報酬改定で「歯科矯正相談料」が設けられました。これは所定の条件で保険適用の可否を診断・説明する相談の評価であり、その後の矯正治療すべてが保険適用になる制度ではありません。
参考:厚生労働省「令和6年度歯科診療報酬改定の主なポイント」
保険診療の自己負担と費用の確認方法
保険診療の費用は、診察、検査、診断、矯正装置、調整、手術など実際に行う診療内容に応じて、診療報酬点数に基づき計算されます。治療期間や手術の有無が異なるため、全国一律の総額を示すことはできません。
| 年齢区分 | 原則的な窓口負担 | 注意点 |
|---|---|---|
| 義務教育就学前 | 2割 | 自治体の子ども医療費助成で負担が軽減される場合がある |
| 義務教育就学後〜69歳 | 3割 | 年齢だけでなく加入制度を確認する |
| 70〜74歳 | 原則2割 | 現役並み所得者は3割 |
| 75歳以上 | 原則1割 | 一定以上の所得者は2割、現役並み所得者は3割 |
窓口負担は、診療報酬点数に基づく医療費へ自己負担割合を掛けて計算されます。ただし、希望する装置や処置が保険診療の範囲に含まれない場合、一連の治療で自由診療と組み合わせられるとは限りません。使用できる装置、保険診療の範囲、自己負担額を治療開始前に医療機関へ確認してください。
矯正治療の負担を軽減できる可能性がある制度
保険適用となる矯正では、高額療養費や自治体の医療費助成を利用できる可能性があります。また、自由診療であっても、治療目的などの条件を満たせば医療費控除の対象になる場合があります。それぞれ対象となる費用と仕組みが異なるため、区別して確認しましょう。
高額療養費制度
保険診療の自己負担額が、年齢や所得区分に応じた上限額を超えた場合は、高額療養費制度の対象になり得ます。自由診療の矯正費用や保険外の費用は原則として対象外です。
2026年8月からは、月単位の自己負担上限に加え、長期療養者などの負担を軽減する年間上限が新設されています。上限額や計算方法、申請手続きは加入している健康保険へ確認してください。
医療費控除
年齢、症状、治療目的などから社会通念上必要と認められる歯列矯正は、自由診療でも医療費控除の対象になる場合があります。一方、容貌を美化することだけを目的とした矯正費用は対象外です。
医療費控除は、治療費が直接給付される制度ではなく、所得控除によって所得税や住民税の負担が軽減される仕組みです。
治療費の支払い方法や医療費控除について詳しく知りたい方は、次の記事も参考にしてください。
関連記事:矯正歯科の支払い方法完全ガイド|一括・分割・デンタルローン・医療費控除のポイント
子どもの医療費助成・育成医療
自治体の子ども医療費助成は、保険診療の自己負担を軽減する制度です。対象年齢や所得制限、矯正治療の扱いは自治体によって異なります。また、18歳未満の一部の疾患では、指定医療機関での治療を条件に育成医療が利用できる場合があります。
関連記事:子供の歯科矯正で補助金を使うには?対象条件・申請のタイミングと進め方を解説
歯科矯正の保険適用に関するよくある質問
Q. 歯並びが悪ければ保険適用になりますか?
歯並びの悪さだけでは、原則として保険適用になりません。国が定める疾患との関係、永久歯3歯以上の萌出不全と埋伏歯開窓術の必要性、顎変形症の手術要件などに該当するかを届出医療機関で診断します。
Q. 大人の歯科矯正も保険適用になりますか?
年齢だけで除外されるわけではありません。対象疾患や顎変形症などの要件を満たせば大人も保険診療の対象になり得ますが、一般的な歯列矯正は原則として自由診療です。
Q. マウスピース矯正は保険適用になりますか?
一般的なマウスピース矯正は原則として自由診療です。保険適用になる症例でも、希望するマウスピース型装置を保険診療で使用できるとは限らないため、使用できる装置を医療機関へ確認してください。
Q. 保険適用はいつから始まったのですか?
矯正歯科の保険対象は診療報酬改定などで段階的に追加されており、すべての矯正が一斉に保険適用になったわけではありません。2024年度には所定の学校歯科健診後の歯科矯正相談料が新設され、2026年度にも対象疾患などの見直しが示されています。
Q. 保険が使える矯正歯科はどうやって探しますか?
地方厚生(支)局が公開する施設基準届出受理医療機関名簿で、疾患・萌出不全は「矯診」、顎変形症は「顎診」の届出を確認します。受診前に対象症例への対応と連携医療機関も問い合わせてください。
まとめ
歯科矯正は原則として自由診療ですが、国が定める疾患に起因する咬合異常、所定の萌出不全、手術を必要とする顎変形症などは保険適用になる場合があります。症状名だけでなく、処置・手術と施設の要件も満たす必要があります。
まずは地方厚生局の名簿で「矯診」または「顎診」の届出医療機関を確認し、診断後に保険診療の範囲、治療方法、自己負担の見込みを書面で確認しましょう。
参考文献
- 公益社団法人 日本矯正歯科学会「矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは」
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】」
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」
- 厚生労働省「令和6年度歯科診療報酬改定の主なポイント」
- 厚生労働省「窓口負担割合等のご相談窓口について」
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- 国税庁「歯列を矯正するための費用」
- この記事の調査方法・更新情報
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- 調査方法:厚生労働省、日本矯正歯科学会、国税庁の公開情報を確認
- 調査項目:保険適用条件、施設基準、窓口負担、高額療養費、医療費控除
- 編集:ベストチョイス編集部
- 情報確認日:2026年8月2日
- 注意事項:制度や対象疾患は改定されることがあります。実際の適用可否と費用は、届出医療機関および加入する保険者へ確認してください。


